モモ果実の肥大に関連するエクスパンシン遺伝子の単離

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要約

肥大中のモモ果実から単離した細胞壁の合成・代謝に関与する遺伝子のうち、エクスパンシン(pfPpExp2)がモモ果実の肥大盛期に発現する。

  • キーワード:モモ、果実肥大、細胞壁、エクスパンシン、遺伝子
  • 担当:果樹研・生理機能部・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(栽培)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

日本の果樹栽培においては大玉果実を生産するため、摘花・摘果等の結実管理作業に多大な労力を費やしている。このため、生産コストの削減に向けて、省力的な大玉果実生産技術を開発することが急務となっている。しかしながら、技術開発の基礎となる果実の肥大制御機構については、ほとんど知見が得られていない。本研究では、モモ果実の生育過程において発現する遺伝子の中から、果実肥大に重要な働きを持つ遺伝子を特定する。

成果の内容・特徴

  • 細胞壁の合成・代謝に関与するタンパク質(エクスパンシン、キシログルカン転移酵素、セルロース合成酵素、スクロース合成酵素)をコードする既知の遺伝子と相同性の高い遺伝子を肥大中のモモ「あかつき」の果実からRT-PCRにより増幅し、クローニングした(表1)。
  • ノーザンブロット解析によりモモ果実の生育に伴う発現量の変化を検討したところ、エクスパンシン(pfPpExp2)が、肥大が盛んな時期に多量に発現することを明らかにした(図1)。
  • 実肥大に関連すると推定されたエクスパンシン遺伝子(pfPpExp2)について全アミノ酸配列を含む遺伝子(PpExp2)をクローニングし、その塩基配列を決定した。
  • サザンブロット解析の結果から、PpExp2はモモゲノム上にシングルコピーで存在していると推定された。

成果の活用面・留意点

  • 果実の肥大機構解明において本遺伝子をプローブとして活用することができる。

具体的データ

表1: 肥大中のモモ「あかつき」の果実より単離したcDNA クローン

 

図1:モモ‘あかつき’果実の肥大曲線(A)および生育過程における細胞壁合成・代謝関連 遺伝子の発現(B)

その他

  • 研究課題名:落葉果樹における果実肥大機構の解明
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1996 ~ 2000 年度
  • 研究担当者:羽山裕子、伊東明子、吉岡博人、樫村芳記
  • 発表論文等:1)Hayama et al. (2001) Scientia Horticulturae 91:239-250
                      2)羽山ら (2000) 園学雑69(別1):70