カラムナータイプリンゴ樹の光合成能の特徴

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要約

展葉初期における新梢葉の光合成速度は、通常品種と比べて、カラムナータイプリンゴ樹の方が高い。この理由として、葉の厚さおよび葉緑素計値との関係から、カラムナータイプリンゴ樹の葉の生長の方が早いためと考えられる。

  • キーワード:リンゴ、カラムナー、光合成
  • 担当:果樹研・リンゴ研究部・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(栽培)、東北農業(果樹)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

近年の研究から、カラムナータイプリンゴ樹における物質生産性などの生態的特性は、通常品種と大きく異なることが明らかにされてきた。その中の一つとして、カラムナータイプ樹においては、樹冠内や個葉毎の光環境条件が新梢の伸長や展葉に伴い悪化することが認められている。
したがって、カラムナータイプ樹を利用したリンゴ栽培において安定的に花芽を確保し高品質果実生産を図るには、整枝剪定法により樹冠内や個葉毎の光環境条件を良好に維持することが重要である。本研究では、そのための基礎的知見として、カラムナータイプ樹における葉の光合成特性について検討を行った。

成果の内容・特徴

  • カラムナータイプ樹における新梢葉の光合成速度は、展葉初期(展葉5~30日後)において光合成に有効な光の強さが 1,500~1,900μmol/m2/s で測定した場合、通常品種に比べて高い。展葉中期(展葉45日後)は差はない(図1)。
  • 展葉初期の葉では、カラムナータイプ樹と通常品種の新梢葉の比葉重が同じ場合でも、カラムナータイプ樹の方が光合成速度は高く、また、カラムナータイプ樹の方が葉の厚みが増すのが速い。展葉中期以降は差はない(図略)。
  • 新梢葉の葉緑素計値は、全展葉期間を通して、カラムナータイプ樹の方が通常品種よりも高く推移し(図2)、また、カラムナータイプ樹および通常品種ともに、新梢葉の展葉初期(図3)と終期(展葉83日後、図略)の葉では、葉緑素計値が高いほど光合成速度は高い。展葉中期(展葉45日~56日後)は差はない(図略)。
  • 結論として、カラムナータイプ樹では通常品種と比べて展葉直後のまだ若い段階の葉では、低い光強度の下では光合成速度に差はないものの、1,500~1,900μmol/m2/s の場合、通常品種に比べて高いことが明らかになった。この理由として、カラムナータイプ樹の展葉初期の葉では通常品種と比べて葉色が濃いことから光合成速度も高いと推定できること、さらに、葉の厚みが増すのが速いことから、展葉開始後から30日後位においてカラムナータイプ樹の葉の生長の方が早いためと考えられた。

成果の活用面・留意点

  • カラムナータイプ樹における整枝剪定技術を開発するために、樹の受光態勢改善のための基礎的知見として活用できる。

具体的データ

図1.新梢葉の展葉後日数と光合成速度との関係 図3.新梢葉の葉緑素計値と光合成速度との関係

 

図2.新梢葉の展開後日数と葉緑素計値との関係

その他

  • 研究課題名:リンゴのカラムナータイプ等新栽培様式の開発と栄養・物質動態の解明
  • 予算区分:超省力園芸
  • 研究期間:1997 ~ 2004 年度
  • 研究担当者:猪俣雄司、工藤和典、和田雅人、増田哲男、鈴木邦彦、別所英男
  • 発表論文等:1) 猪俣雄司ら (1999) 東北農業研究 52:153-154
                      2) 猪俣雄司ら (2001) 東北農業研究 54(印刷中)