水分損失によるカキ果実の品質劣化

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要約

カキ「富有」を低湿度条件で貯蔵すると水分損失を起こしてエチレン生成量が増加し、果肉細胞壁のセルロースの減少とペクチンの低分子化が起こり果肉硬度が低下する。高湿度条件で貯蔵すると水分損失を抑制し、エチレン生成と果肉軟化が抑制される。

  • キーワード:カキ、水分損失、エチレン、細胞壁、果肉硬度
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究部・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹(栽培)
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

カキは長期貯蔵が困難な果実であり、流通過程で軟化などの品質劣化を生じ、商品価値が低下するため原因究明と対策が求められている。果実の水分損失は老化を引き起こす要因の一つと考えられている。そこで水分損失がエチレン生成や果肉硬度等におよぼす影響を調査し、鮮度保持技術向上への知見を得る。

成果の内容・特徴

  • 低湿度条件(湿度60%)では果肉とヘタの水ポテンシャルが貯蔵直後から低下するが、特にヘタにおける低下が著しい。高湿度条件(湿度100%)では果肉とヘタの水ポテンシャルが高く保持される。
  • 果肉硬度は高湿度条件の方が低湿度条件に比べて高く維持される(図1)。
  • 果実とヘタのエチレン生成量は低湿度条件で多く、高湿度条件で少ない(図2)。貯蔵の早い段階では、エチレン生成は果実全体のうちヘタから発生する割合が多い。またヘタのエチレン生成量はヘタの水分損失にともなって増加する(図3)。
  • 果肉細胞壁は、ペクチンが低湿度条件で高湿度条件に比べて低分子化する(図4)。またセルロースは貯蔵直後に6.0mg/果肉1gであったのが貯蔵9日目になると低湿度条件で3.1mg/果肉1gまで減少したのに対し高湿度条件では3.9mg/果肉1gまでの減少にとどまる。ヘミセルロース量は両区とも約4.0mg/果肉1g水準で推移し差は少ない。
  • これらによりカキ果実は水分損失により、まず乾燥しやすいヘタからエチレン生成が起こり、その後果実全体からのエチレン生成量が増加する。果肉組織は細胞壁のセルロースの減少とペクチンの低分子化にともなって果肉が軟化する可能性が示唆され る。高湿度条件では果実からの水分損失を抑えることができ品質劣化を抑制するこ とが出来る。

成果の活用面・留意点

  • 温度条件の検討により高湿度貯蔵における品質保持効果を増進することが出来ると思われる。

具体的データ

図1 果肉硬度の推移図2 果実とヘタのエチレン生成量の推移

 

図3 貯蔵中におけるヘタの水分減少率とエチレン生成量との関係 図4 果肉ペクチンの分子量分布(貯蔵0,9日目)遅く出現するピークが高いほど低分子化

その他

  • 研究課題名:品質劣化の水分生理と老化誘導機構の解明
  • 予算区分:品質劣化機構
  • 研究期間:1999 ~ 2001 年度
  • 研究担当者:土田靖久、森永邦久、児下佳子、朝倉利員
  • 発表論文等:1)土田ら (2000) 園学雑 69(別1):396
                      2)土田ら (2001) 園学雑 70(別1):355