食味と香りが良い中生のカンキツ新品種「麗紅」(れいこう)(カンキツ口之津32号)

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要約

新品種「麗紅」は、「清見・アンコールNo.5」に「マーコット」を交雑して育成した中生のタンゴールである。外観は赤橙色、平滑で美麗である。芳香があり、糖度が高く良食味である。

  • キーワード:カンキツ、新品種、中生
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

年内に成熟するウンシュウミカンの生産に片寄る我が国のカンキツの品種構成を改善するため、年明け以降に成熟する中・晩生カンキツ品種の育成が望まれている。そこで、中生で、高糖度、良食味で、無核性かつ単胚性である「清見・アンコールNo.5」を種子親に、晩生で高糖度・良食味で有核の「マーコット」を花粉親にして交雑を行い、中生で、芳香があり、糖度が高く食味が良いタンゴールタイプの品種育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1984年(昭和 59 年)に果樹試験場口之津支場(現果樹研究所カンキツ研究部(口之津)において、「清見・アンコールNo.5」に「マーコット」を交雑して育成した系統である。1986年(昭和 61 年)にウンシュウミカンに高接ぎ、1989年(平成元年)に初結実し、一次選抜した。1996年(平成8年)4月よりカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験を実施し、新品種候補にふさわしいとの合意が得られた。
  • 果実は扁円形で平均約 210g である。果皮は淡赤橙色~濃橙色、厚さ約 2.3mm 内外で薄いが、硬さは中程度で、剥皮はやや容易である。果面は平滑で、11月下旬から12月中旬に完全着色し、退色しにくい。浮皮はほとんど発生しない。果肉は濃橙色で、肉質は柔らかく、果汁量は多い。じょうのう膜は比較的薄く食べやすい。果汁の糖度は約 12% で高く、減酸は比較的容易で、オレンジ、マーコット香の混合したような芳香があり食味は良好である。成熟期は1月中下旬で、「イヨカン」、「清見」より早熟である。雄性不稔性を有し、花粉が無いので他品種の花粉がかからなければ無核である(表1、図1)。
  • 樹勢は中庸で、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢は長く、太さは中位で、密生する。とげは発生するが、短く、少なくなってきており、樹勢が落ち着けば発生しなくなると考えられる。結実性は比較的良好である。そうか病には強いが、かいよう病に対してはやや罹病性である。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発生程度は多である。

成果の活用面・留意点

  • 雄性不稔性であるが、種子形成力が強いため、無核果、少核果を得るためには、周囲の園地に花粉を形成する品種が植栽されていないことが望ましい。
  • 施設栽培下では外観、内容とも高品質であることに加え、無核果となり、腰高果とならないことから、年末商材として活用できる。

具体的データ

表1 カンキツ口之津32号の各試験地における特性

 

図1 「カンキツ口之津32号」の果実

その他

  • 研究課題名:カンキツ第3次育種試験、カンキツ第8回系統適応性・特性検定試験
  • 課題ID:09-02-04-01-29-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1984~2002年度
  • 研究担当者:松本亮司、吉岡照高、國賀武、山本雅史、三谷宣仁、奥代直巳、山田彬雄、浅田謙介、池宮秀和、
                      吉永勝一、内原茂、生山 巖、村田広野