肉質が優れ、大粒で食味良好なブドウの新品種「シャインマスカット」(ブドウ安芸津23号)

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要約

新品種「シャインマスカット」は、「ブドウ安芸津21号」(「スチューベン」×「マスカット・オブ・アレキサンドリア」)に「白南」を交雑して育成した大粒で食味良好な二倍体のブドウである。果皮色は黄緑色で、肉質が崩壊性で硬く、マスカット香を呈する。

  • キーワード:ブドウ、マスカット、新品種、種なし
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

わが国におけるブドウは、「巨峰」、「ピオーネ」等大粒品種の消費が伸びており、種なしブドウに対する要求も大きい。ブドウ生産を維持・発展させるためには、より食味が優れ、種なし果実の生産できる大粒ブドウの育成が必要である。特に、アメリカブドウに由来する塊状の肉質よりヨーロッパブドウに由来する崩壊性で硬い肉質に対する評価が高く、「巨峰」、「ピオーネ」はその中間の肉質である。また、「巨峰」、「ピオーネ」等がアメリカブドウの香りであるフォクシー香であることから、ヨーロッパブドウの香りであるマスカット香を持つ品種の需要も大きいと考えられる。そこで、肉質が崩壊性で硬く、マスカット香を持ち、大粒で種なし栽培できる品種の育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1988年(昭和 63 年)に果樹試験場安芸津支場(現 果樹研究所ブドウ・カキ研究部)において「ブドウ安芸津21号」(「スチューベン」×「マスカット・オブ・アレキサンドリア」)に「白南」を交雑して育成した二倍体の系統である。
  • 1999年(平成 11 年)から 2002年(平成 14 年)まで系統番号「ブドウ安芸津23号」としてブドウ第9回系統適応性検定試験に供試して検討を続けた結果、2003年(平成 15年 )1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論を得た。
  • 「巨峰」とほぼ同時期に成熟する黄緑色のブドウである。花振るい性は少なく、栽培容易である。黒とう病には弱い。肉質は崩壊性で硬く、マスカット香を呈する。糖度は高く 20% 程度になり、酸含量が 0.3~0.4g/100ml と少ない。はく皮の難易は「巨峰」より困難で「ネオ・マスカット」程度である。裂果性はなく、日持ち性は「巨峰」より良い。有核栽培では、果粒重は 10g 程度である(表1、図1)。

成果の活用面・留意点

  • 有核栽培の場合、整房は花房の下部 4cm を切り落とし、その上部 7cm 程度とするのが良く、花振るいを防ぐために整房部分の花が満開期に整房を行う必要がある。
  • 摘粒は、9cm の穂軸に 40 粒程度とすると良い。
  • 開花前にストレプトマイシン 200ppm を散布し、満開時と満開 10~15 日にジベレリン 25ppm を花(果)房浸漬処理を行うと種なしとなり、果粒重が 12g 程度となる。その場合、樹勢を強くし、開花始めに花房の下部 4cm を残す整房を行ってジベレリン処理を行う。処理により小果梗が伸長する傾向がある。
  • ストレプトマイシン及びジベレリンを使用するためには、それらの農薬登録が必要であるが、現在のところ、登録されていない。今後、試験成績をとりまとめ、農薬メーカーに農薬登録を要請する予定である。

具体的データ

表1 「安芸津23号」の育成地(広島県安芸津町)における特性

 

図1 「ブドウ安芸津23号」の果実

その他

  • 研究課題名:ブドウ第9回系統適応性検定試験、ブドウ第2次および第3次育種試験
  • 課題ID:09-02-04-*-24-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1988~2002年度
  • 研究担当者:山田昌彦、山根弘康、佐藤明彦、平川信之、岩波宏、吉永勝一、小澤俊治、三谷宣仁、白石美樹夫、
                      吉岡美加乃、中島育子、中野正明、中畝良二