大果で早生の完全甘ガキの新品種「貴秋」(きしゅう)(カキ安芸津15号)

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要約

新品種「貴秋」は「伊豆」に「安芸津5号」(「富有」×「興津16号」)を交雑して育成した早生の完全甘ガキである。果実成熟期は「伊豆」と「松本早生富有」の中間で、大果である。

  • キーワード:カキ、完全甘ガキ、新品種、大果、早生
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

カキには甘ガキ品種と渋ガキ品種があるが、最も望ましいのは安定して甘ガキを生産できる完全甘ガキ品種である。経済栽培されている甘ガキ品種は、中~晩生である「富有」、「次郎」及びその枝変わり品種が主体である。早生の完全甘ガキとしては、「伊豆」が栽培されているが、収量性と日持ち性が劣り、汚損果やへたすき果の発生が多い等の欠点が多いため、優れた早生品種開発への要望が強い。そこで、2000年(平成 12 年)に極早生の完全甘ガキ新品種「早秋」、2002年(平成 14 年)に「甘秋」を発表、命名登録した。それに続き、さらに多様な早生の完全甘ガキ品種の育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1984年(昭和 59 年)に果樹試験場安芸津支場(現 果樹研究所ブドウ・カキ研究部)において「伊豆」に「安芸津5号」{「富有」×「興津16号」(「晩御所」×「花御所」)}を交雑して育成した系統である。
  • 1996年(平成8年)から2002年(平成 14 年)まで系統番号「カキ安芸津15号」としてカキ第5回系統適応性検定試験に供試して検討を続けた結果、2003年(平成 15 年)1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論を得た。
  • 果実の甘渋性は完全甘ガキである。成熟期は早生で、「伊豆」と「松本早生富有」の中間の時期に成熟する。果形は扁平で、果実重は「松本早生富有」より大きく、育成地では平均 345g となる(図1)。果皮色は橙色で、育成地ではカラーチャート 6.5 程度である。糖度は 16% 程度である。適熟果の肉質は緻密と粗の中間である。果肉がやや硬いので、カラーチャート6~7程度で収穫し、数日おいてから食べると軟らかくなり食味が向上する。日持ち性は育成地では常温で 18 日程度と優れている。へたすき果の発生は「伊豆」や「松本早生富有」より少ない。汚損果の発生は少ない。果頂裂果はわずかに発生する(表1)。
  • 樹勢は中程度で、樹姿は開張と直立の中間である。雌花の着生は多い。雌花の開花期は「松本早生富有」より遅い。雄花をまれに着生する。種子形成力が強く、4個程度の種子が入るが、種子は多くが発育途中で退化し、しいなとなる。早期落果は少ないが、年次と場所により収穫前の樹上軟化を生じることがある。

成果の活用面・留意点

  • 完全甘ガキであり、夏秋期の気温の高い地域に適応し、一般に「松本早生富有」、「富有」、「次郎」、「前川次郎」の栽培地域で栽培できる。
  • 果皮色がカラーチャート値7を越えると軟化しやすくなるため、果頂部のカラーチャート値が6~7程度の果実を収穫し、収穫後数日おいてから食べるのがよい。

具体的データ

表1 「安芸津15号」の育成地(広島県安芸津)における特性

 

図1 「カキ安芸津15号」の果実

その他

  • 研究課題名:カキ第5回系統適応性検定試験、カキ第3次および第4次育種試験
  • 課題ID:09-02-04-*-25-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1984~2002年度
  • 研究担当者:山田昌彦、山根弘康、佐藤明彦、吉永勝一、平川信之、岩波宏、小澤俊治、平林利郎、角谷真奈美、
                      三谷宣仁、白石美樹夫、角利昭、吉岡美加乃、中島育子