SSRマーカーによるモモの親子鑑定
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要約
SSR マーカーを用いて交雑育種、偶発実生及び枝変わり由来のモモ品種の親子鑑定を行い、一部の品種で親子関係に誤りがあることが明らかになった。さらに、「上海水蜜桃」が現在の日本の生食用モモの起源品種の1つであることが推定される。
- キーワード:モモ、親子鑑定、上海水蜜桃、SSR
- 担当:果樹研・遺伝育種部・上席研究官
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・育種
- 分類:科学・普及
背景・ねらい
モモをはじめとする果樹類では、枝変わりや偶発実生由来の品種、同名異品種や異名同品種が多数知られており、その来歴や親子の関係について定かでないものが多く、また、接ぎ木等の栄養繁殖時の誤りの可能性があることが示唆されているが、従来の DNA マーカーでは信頼度に問題があるため、親子鑑定は困難である。
本研究では、果樹研で開発したモモ由来の SSR マーカー*を用いて、モモの親子鑑定を行い、交雑品種の親子関係、枝変わり品種、偶発実生として得られた品種の来歴の確認を行い、さらに日本の栽培モモ品種の起源について解析する。
*Simple Sequence Repeatの略。マイクロサテライトとも言う。ヒトの親子鑑定で実用的に使われている信頼度の高いDNAマーカーである。
成果の内容・特徴
- 17 種類のモモ由来 SSR マーカーを用いた解析により、「あかつき」、「ゆうぞら」など交雑育種で育成されたモモ9品種の親子の関係が確認できる(表1)。
- 枝変わり品種とされる「日川白鳳」では、原品種とされる「白鳳」と比較して 12 ケ所の SSR で異なる遺伝子型を示したことから、枝変わりではない(表1)。
- 偶発実生由来の「阿部白桃」、「川中島白桃」、「高陽白桃」、「清水白桃」では、各 SSR 座で推定親の「白桃」の対立遺伝子の一方を持っていたことから、「白桃」の子と考えられる(表1)。
- 「上海水蜜桃」は、SSR 分析の結果から「白桃」の親である可能性が高く、「白桃」の子である「白鳳」、「あかつき」を初め日本の生食用モモ品種の起源品種の1つと推定される(表2)。
成果の活用面・留意点
- SSR マーカーを利用して、モモの親子鑑定ができる。
- モモ由来 SSR マーカーは、スモモ、アンズ、ウメ、オウトウ等サクラ属果樹に適用可能である。
- 今後、SSR マーカーを利用したデータベースを作成することにより、品種の同定(葉や果実から同定すること)が可能である。
- 将来、品種の不当表示、輸入果実の品種の判定等の品種の権利保護に利用できる技術である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:モモとナシのDNAマーカーの作出と高密度連鎖地図の作成
- 課題ID:09-02-07-01-02-02
- 予算区分:DNAマーカー
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:山本俊哉、今井剛、松田長生、山口正己、土師岳、八重垣英明、持田耕平(東京農工大)、
荻原勲(東京農工大)、林建樹
- 発表論文等:1)Yamamoto et al. (2003) Breed. Sci. 53:35-40.
2)Yamamoto et al. (2003) J. Japan. Soc. Hortic. Sci. (in press).
3)持田他(2002)園学雑71(別1):65.