ニホングリのSSR マーカーの開発と品種識別

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要約

クリ属では初めて、ニホングリで信頼度や多型性が高い SSR マーカーを 15 種類開発した。ニホングリ 30 品種をすべて識別することができる。本 SSR マーカーは、品種識別、親子の鑑定、選抜マーカーとして有用である。

  • キーワード:ニホングリ、品種識別、SSR
  • 担当:果樹研・遺伝育種部・育種技術研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

クリはブナ科に属する果樹で、その果実や木材の利用を目的に、日本のみならずアジア、ヨーロッパ等世界の温帯地域で広く栽培されている。しかし、分子マーカーによる解析例は少なく、栽培ニホングリの遺伝的多様性について、十分に解明されていない。
本課題では、ヒトの親子鑑定に広く利用されている信頼性や多型性の高い SSR マーカー(Simple Sequence Repeat、別名マイクロサテライト)を開発し、それを用いてクリ栽培品種の解析を行った。

成果の内容・特徴

  • ニホングリ品種「筑波」のゲノム DNA をもとに、(AG)/(TC) の反復配列を含む 15 種類の SSR マーカーを開発した(図1、表1)。
  • SSR マーカーを用いて、クリ品種「筑波」(F1)とその両親である「岸根」(♀)と「芳養玉」(♂)、及び「丹沢」(F1)とその両親である「乙宗」(♀)と「大正早生」(♂)でバンドの遺伝を調べたところ、両親のバンドが矛盾なく子供に遺伝する。このことから、親子鑑定に利用可能であることが示唆される。
  • 15 種類の SSR マーカーを用いて、ニホングリ 30 品種・系統のすべてが識別できる。対立遺伝子数、ヘテロ接合度とも高く、ニホングリではヘテロ性が高く、遺伝的多様性に富んでいる(表1)。
  • ニホングリとチュウゴクグリ間では明確な差が見られたが、日本由来の栽培品種、日本の自生グリ、韓国由来の栽培品種、韓国の自生グリ間で、明確な差は見られなかった。
  • SSR マーカーのほとんどが、チュウゴクグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリ等の他種のクリに適用可能である。

成果の活用面・留意点

  • 信頼度の高いクリの品種識別が可能である。
  • クリの親子鑑定に利用できる。

具体的データ

図1 SSRマーカーKT005aの塩基配列

表1 開発した15種類のニホングリ由来SSRマーカーの特徴

その他

  • 研究課題名:落葉果樹類の分子マーカーの作出
  • 課題ID:09-02-07-*-05-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:山本俊哉、今井剛、松田長生、林建樹、壽和夫、正田守幸、田中孝尚(東北大)、鈴木三男(東北大)
  • 発表論文等:1)Yamamoto et al. (2003) J. Hort. Sci. Biotech. (in press, March 2003)
                      2)田中孝尚ら (2002) 育種学研究4(別1): 79.
                      3)山本俊哉ら (2002) 育種学研究4(別1): 80.