TaqMan real-time RT-PCR によるカンキツエクソコーティスウイロイド( CEVd )の定量的高感度検出

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要約

簡易、定量的、そして高感度に、RNA を遺伝子診断する手法であるTaqMan real-time RT-PCR を用いて、RNA を遺伝子に持つ CEVd の検出法を開発した。また、本法により樹体内での部位別濃度を定量し、診断に用いる試料採集部位の検討を行ったところ、直径5～8mm 程度の太枝の樹皮、又は夏秋梢先端が適した。

  • キーワード:カンキツ、ウイロイド、定量、高感度、診断、TaqMan real-time RT-PCR
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・病害研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

TaqMan real-time RT-PCR は、定量的、かつ高感度に標的 RNA を遺伝子診断する手法であり、しかも通常の RT-PCR で用いる電気泳動と染色操作が不要であるため、特定 RNA 分子の簡易検出に適している。そこで、環状1本鎖 RNA 分子である、カンキツエクソコーティス病の病原ウイロイド CEVd の、本法による高感度な簡易診断を試みるとともに、カンキツ樹体内における CEVd の濃度分布を調査し、診断時の試料採集に適した部位を検討する。

成果の内容・特徴

  • 国内より検出された CEVd の塩基配列の中で比較的変異の少ない領域を選んで設計した専用のプライマー対及び TaqMan プローブを用い、TaqMan real-time RT-PCR による CEVd の定量的な遺伝子診断を行うと、約 0.05fg までの陽性反応が得られる(図1)。しかし、健全試料や他種ウイロイドを保毒した試料からも、2fg 相当までの非特異反応が見られるので,実用上の検出限界は3fg 程度である。
  • 本法の検出限界は,通常の RT-PCR による検出限界(エチジウムブロマイド染色で 100fg )より極めて低い。Nucleic acid sequence-based amplification (NASBA) の検出限界1fg には、やや劣るものの、本法には操作がより簡易な利点(増幅反応後の電気泳動と染色操作が不要)がある。
  • 鉢植ラフレモンから採集した部位別試料の、本法による CEVd 濃度の比較から(表1)、CEVd の検定に用いる試料としては、直径5～8mm 程度の太枝の樹皮又は夏秋梢先端の組織が適する。

成果の活用面・留意点

  • TaqMan real-time RT-PCR を用いた遺伝子診断は、エライザプレートに似た専用の 96 穴プレートを用いて検出を行うので、エライザ同様の多検体処理に適している。このため、検定の省力化及び迅速化が図れる。
  • 本法の実施には、高価な専用の検出装置が必要である(現時点で最低約 800 万円)。
  • 全ての CEVd 変異株が検出可能かどうかについては、今後、検討を要する。

具体的データ

図1 TaqMan real-time RT-PCRにっよるCEVdの定量的高感度検出

表1 試料採集部位別のCEDv濃度

 

その他

  • 研究課題名:カンキツエクソコーティス病の弱毒ウイロイドの探索および遺伝子解析
  • 課題ID:09-03-02-*-09-02
  • 予算区分:先端技術(バイテク型)
  • 研究期間:2000 ～ 2003 年度
  • 研究担当者:伊藤隆男、伊藤伝、塩谷浩、井上豊(神戸植防)
  • 発表論文等:伊藤ら(2002)九病虫研会報 48: 90-91 (講要).