イチジク葉片由来の器官形成および植物体の再生
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要約
フロログルシノールの添加によってイチジク葉片から効率よく不定根と不定芽を形成させ、不定芽から植物体を再生できる。
- キーワード:イチジク、不定根、不定芽、フロログルシノール、植物体再生
- 担当:果樹研・遺伝育種部・遺伝資源研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・育種
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
イチジクは近年栽培が著しく増加している樹種の一つであるが、耐病虫性や耐寒性等の克服や生理機能の解明のためには、遺伝子組換え体の作出技術の確立が不可欠である。しかし、これまでイチジクにおいて器官形成、不定胚形成及びプロトプラストからの再分化系は確立しておらず、イチジクの遺伝子組換え体作出において大きな制約条件になっている。そこで、イチジクの葉片から不定根及び不定芽の効率的な誘導法を確立し、さらに植物体の再生条件についても検討する。
成果の内容・特徴
- イチジク「桝井ドーフィン」の培養葉片を 2,4-D を添加した MS 培地で培養すると葉片から直接不定根が誘導され、フロログルシノール(PG)の添加によって発根率はさらに高まる(図1)。特に、2,4-D 1.0 mg l-1 と PG 0.5mM を添加した MS 培地で最もよく不定根が形成される(表1)。
- イチジク葉片を 2,4-D とチジアズロン(TDZ)を添加した MS 培地で培養すると器官は形成されないが、PG の添加によって不定芽を誘導できる(図2)。特に、PG0.5mM の添加によって効率よく不定芽を誘導できる(表2)。
- 不定芽は上記の培地では伸長しないので、不定芽を切り取って継代培養する。継代培地として BAP 0.5 mg l-1 と NAA 0.1 mg l-1 を添加したMS培地で良好な不定芽の増殖と伸長が図れる。
- 伸長した不定芽は植物ホルモンフリーの MS 培地又は IBA 1.0 mg l-1 を添加した MS 培地に移植すると発根する。馴化過程において再生植物の枯死はほとんど認められず、生育は良好である。
成果の活用面・留意点
- 初めてイチジクから器官形成を誘導し植物体を再生できたことから、今後遺伝子組換え体作出に利用できる。
- 培養葉片を用いることによって周年で不定根や不定芽を獲得できる。
- 今後、「桝井ドーフィン」以外の品種での適用を拡大するとともに、継代培養を含め植物ホルモンバランスと PG との関係について検討する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:イチジク株枯病抵抗性台木育成のための育種素材の選抜
- 課題ID:09-01-01-02-03-02
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2002~2005年度
- 研究担当者:薬師寺 博、間瀬誠子、佐藤義彦
- 発表論文等:1)薬師寺ら (2002) 園学雑 71(別2):233.
2)薬師寺ら(2002)果樹バイテクゲノム研究会:3-4.
3)イチジクの不定根誘導方法及び不定芽誘導方法
(特許出願:平成14年10月4日 特願2002-291986)