ニホンナシ由来の新規自家不和合性遺伝子 S9 の発見と検出法

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要約

ニホンナシ品種「新星」及び「新興」の自家不和合性遺伝子( S 遺伝子)型はどちらも新規の S 遺伝子 S9 を含む S4S9 である。新たに開発したプライマーによる PCR 法でニホンナシ品種中の S9 遺伝子の検出が可能である。

  • キーワード:自家不和合性遺伝子、S9、ニホンナシ
  • 担当:果樹研・遺伝育種部・ナシ・クリ育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ニホンナシは自らの花粉では結実しない自家不和合性の果樹でありその栽培には受粉作業が必要である。この自家不和合性は一対のS 遺伝子に制御されており、異なる品種同士でも S 遺伝子型が互いに一致する品種(例えば「幸水」 S4S5 と「新水」 S4S5 )は交雑することができない。現在まで S1 から S8 までの8種類の S 遺伝子が報告されているが、主要品種においてもこれらの S 遺伝子では分類できない品種が多く存在する。この研究で、新たな S 遺伝子の検出法を開発し、受粉樹の選定に利用可能な栽培品種の S 遺伝子型を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • S 遺伝子に相同性のある配列から設計したプライマーによる PCR 断片の塩基配列の解析により「新星」、「新興」は新たな S 遺伝子(S9)を有することが明らかになる。
  • 塩基配列及びアミノ酸配列を解析したところ S9 遺伝子はリンゴの S3 遺伝子と高い相同性を示す(図1)。
  • S9 遺伝子を検出する新たな PCR 法 (図2)の開発により、今まで S 遺伝子型が不明であったニホンナシ品種から S9 遺伝子を検出することができる(表1)。

成果の活用面・留意点

  • ニホンナシにおいて PCR-RFLP 法による各品種の S 遺伝子型の調査、分類を行うことで受粉樹の選定の有効な指標となる。
  • 多型頻度が高い S 遺伝子の調査を行うことで品種識別のための DNA マーカーとしても利用可能である。
  • ニホンナシ品種間におけるより確実な和合性の判定には、交配試験を組み合わせることが必要である

具体的データ

図1 ニホンナシ及びリンゴ由来のS 遺伝 子のアミノ酸配列による系統樹 図2 PCR 法によるニホンナシS9 遺伝 子の検出

 

表1.S9遺伝子を持つニホンナシの品種および系統

その他

  • 研究課題名:ナシの自家不和合性検定個体の作出
  • 課題ID:09-01-03-*-05-02
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001 ~ 2005 年度
  • 研究担当者:澤村豊、齋藤寿広、山本俊哉、佐藤義彦、林建樹、壽和夫
  • 発表論文等:1) 澤村ら(2001)園学雑70(別1):67.
                      2) Y. Sawamura et al.(2002) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 71(3):342-347.
                      3) 澤村ら(2002)園学雑71(別2):220.
                      4) 澤村ら(2002)果樹バイテクゲノム研究会:79.