温州萎縮ウイルスの熱処理による変異株の作出と検出法

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要約

温州萎縮ウイルスは、感染したウンシュウミカン苗木の熱処理により、樹体内で変異株を生じ、それらをSSCP法により簡便に検出できる。

  • キーワード:温州萎縮ウイルス、熱処理、変異株、SSCP法
  • 担当:果樹研・生産環境部・病原機能研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

温州萎縮ウイルス( Satsuma dwarf virus:SDV )は、わが国の主要カンキツであるウンシュウミカンに大きな被害をもたらしており、土壌伝染すると考えられているが、媒介生物は不明である。発病跡地対策として、これまで土壌の物理的除去や化学的消毒が試みられたが、充分な効果が上がっておらず、対策として弱毒ウイルスの利用が期待されている。そこで、熱処理による SDV の変異株の作出とその検出法を検討し、SDV 弱毒ウイルスの開発に資する。

成果の内容・特徴

  • SDVの標準株である S-58 に感染したウンシュウミカン苗木を 38℃/30℃(昼間・夜間)で 14~28 日間熱処理した。この苗木から得た樹皮小片をラフレモン実生苗 70 本に接ぎ木接種することにより、23 株の熱処理ウイルス株を得た。
  • 得られた 23 株から、S-58 の塩基配列を基に作成した3種のプライマーペアを用いた RT-PCR により PCR 産物を得た。この PCR 産物の一本鎖高次構造多型(Single strand conformation polymorphism 略してSSCP )を調べた結果、23 株のうち5株(H-6、 H-10、 H-13、 H-20、H-47)で多型が検出され、電気泳動で異なるパターンを示した(図、表)。
  • 多型の検出された熱処理株5株及び S-58 と同じ電気泳動パターンを示した2株(H-1、H-5)の PCR 産物の塩基配列を比較した。その結果、H-1、H-5 は、すべて S-58 と一致したが、多型の検出された5株は異なっていた(表)。以上、熱処理により生じた塩基配列を異にする変異株を SSCP 法で検出できることが明らかになった。

成果の活用面・留意点

  • SSCP 法は弱毒ウイルスの人為的作出の際の有効な選抜手段となると考えられる。

具体的データ

図 PCR 産物のSSCP 分析の例 H-1, H-5 はS-58 と同じパターンを示し、H-13 はS-58 と異なるパターンを示した。

 

表 熱処理後に得られたウイルスのSSCPパターンと塩基配列、アミノ酸配列の比較

その他

  • 研究課題名:温州萎縮ウイルスの熱処理による遺伝的変異株の作出と検出法の開発
  • 課題ID:09-03-02-*-04-01
  • 予算区分:外国人特別
  • 研究期間:2000~2001年度
  • 研究担当者:韓相変、加納健、今田準、足立嘉彦、家城洋之、下村克己