カンキツ「清見」は無核品種育成の母本として有用
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要約
「清見」を種子親とした個体群では、やく退化、自家不和合及び雌性不稔の個体が出現し、無核個体の出現頻度が高い。
- キーワード:カンキツ、清見、無核性、雌性不稔、やく退化、自家不和合
- 担当:果樹研・カンキツ研究部・素材開発研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・育種
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
たね無しであることは、カンキツの経済品種として極めて重要な特性である。「清見」は、ウンシュウミカンと「トロビタ」オレンジの組み合わせで育成された品種であり、退化したやくを持ち単為結果する。この品種は単胚性で果実品質も優れていることから育種親として重用され、無核品種を育成することに成功している。しかし、組み合わせによって無核個体の出現率に違いがあるので、効率的に品種改良を進めるために、後代が無核となる要因とその遺伝様式を明らかにし、どのような花粉親を用いれば無核個体が分離するか明らかにする。
成果の内容・特徴
- やく退化は、細胞質と核の遺伝子の相互作用により発現し、ウンシュウミカン由来の細胞質を持つ「清見」では、オレンジやその近縁種及び「清見」やウンシュウミカンの後代を花粉親とすると雄性不稔による無核個体を獲得できる(図1、表1)。
- 「清見」の雌性器官は健全で、種子を容易に獲得できるが、ウンシュウミカンを戻し交雑した場合は、約半数の個体は受粉しても少核又は無核となる雌性不稔性である(表2)。
- 「清見」と自家不和合性の「E-647」(「清見」×「オセオラ」)の後代において、自家不和合性と自家和合性の個体が分離することから、「清見」は不和合性に関する遺伝子をヘテロに持つ(表3、図2)。
成果の活用面・留意点
- カンキツの交雑育種において、上記の形質遺伝を考慮して花粉親を選定することにより「清見」を母本として無核品種育成が可能である。
- 複数の無核因子の分離を期待できる組み合わせでは、より効率的に無核個体の獲得が期待できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ダイアレル交雑によるカンキツ諸形質の遺伝様式の解明
- 課題ID:09-02-04-*-12-02
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:根角博久、吉田俊雄、吉岡照高、中野睦子、平林利郎、大村三男、伊藤祐司
- 発表論文等:1)根角ら(1997)園学雑66(別2):164-165.
2)中野ら(2001)園学雑70(5):539-545.
3)根角ら(2000) 園学雑69(別1):192.
4)根角ら(2001) 園学雑70(別1):176.
5)根角ら(2002) 園学雑71(別1):357.