花芽形成に関連した遺伝子の組換えによる早期開花性リンゴの作出

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要約

シロイヌナズナの花芽形成抑制遺伝子と相同な遺伝子 MdTFL をリンゴから単離した。MdTFL の過剰発現はシロイヌナズナの開花を遅延させる。一方 MdTFL のアンチセンス遺伝子を導入した組換えリンゴは最短8カ月で開花し、受粉により正常に結実する。

  • キーワード:リンゴ、花芽形成、幼若性、早期開花、MdTFLTFL1
  • 担当:果樹研・リンゴ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種、東北農業・果樹
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

永年性木本植物である果樹には長い幼若期間があり、播種後10年を経過しても開花しない樹種も多い。果樹の育種事業を行う際、この長期の幼若期間中は果実形質調査を行うことはできず、効率的な育種の大きな障害となっている。そのため、花芽形成に関与する遺伝子を利用した幼若期間短縮技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 花芽形成を抑制する機能をもつシロイヌナズナの遺伝子TERMINAL FLOWER1(TFL1)と相同な機能を持つ遺伝子をリンゴから単離し、MdTFL (Malus domestica TFL1) と命名した。図1に MdTFL 遺伝子と既知の TFL1 様遺伝子との系統関係を示す。
  • リンゴ茎頂部における MdTFL の発現は、花芽分化期直前にピークに達し、その後減少する(データ略)。
  • MdTFL を組込んだシロイヌナズナは、播種後平均 30 日で開花する対照(野生型)と比較し開花が9~23日遅延し、MdTFL は開花抑制(幼若性維持)機能を有する(図2)。
  • 形質転換用ベクター(MdTFL アンチセンス遺伝子を組込んだベクター)を構築し、その遺伝子をリンゴ「王林」の葉片に導入して作出した組換え体は、接木後最短8カ月で開花する(図3)。
  • 早期開花した系統の花器官は形態的に正常であり(図4)、受粉することにより外観的に正常な果実を形成する。

成果の活用面・留意点

  • リンゴの早期開花・結実による世代促進技術の開発につながる。
  • 他の果樹作物や木本植物における幼若期間の短縮に応用できる。
  • 開花・結実の安定性、早期開花性の後代への遺伝及び組換え体の安全性については詳細な解析・評価を行う必要がある。

具体的データ

図1.リンゴMdTFL遺伝子と他のTFL1様遺伝子との系統関係 図2.MdTFL遺伝子を導入したシロイヌナズナの開花遅延

 

図3.MdTFLアンチセンス遺伝子を導入し早期開花したリンゴ樹 図4.早期開花した組換えリンゴの花

その他

  • 研究課題名:花芽形成遺伝子導入による早期結実性リンゴの開発
  • 課題ID:09-01-04-02-07-02
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:2002~2005年度
  • 研究担当者:古藤田信博、副島淳一、和田雅人、増田哲男
  • 発表論文等:1) 特許出願「花芽形成抑制遺伝子及び早期開花性が付与された植物(特願2002-180289)」
                      2) Kotoda et al. (2002) XXVIth International Horticultural Congress abst.:91.