リンゴ花芽形成遺伝子AFL1AFL2の単離と機能解明

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要約

リンゴ花芽形成遺伝子 AFL1AFL2 をシロイヌナズナ LEAFY 遺伝子のホモログとして単離した。両遺伝子は互いに 90% の相同性を持つが、発現時期と発現組織は異なる。これら遺伝子のシロイヌナズナの導入により、早期開花とロゼット軸からの直接的な単生花の発生が見られる。

  • キーワード:リンゴ、花芽形成、AFLLEAFY
  • 担当:果樹研・リンゴ研究部・栽培生理研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培、東北農業・果樹
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

リンゴを含む果樹一般では開花・結実に長い年数が必要である。これは、果樹の生理研究や新品種の育成にとって大きな障害となっている。モデル植物であるシロイヌナズナでは花芽形成遺伝子であるLEAFYが単離されており、この遺伝子と相同なリンゴの遺伝子が花芽形成に働く事が期待された。本研究では、リンゴの花芽形成に関与する遺伝子の単離とその機能解明を行った。

成果の内容・特徴

  • 「紅玉」の花芽分化時期の茎頂部から mRNA を単離して、cDNA ライブラリーを作製した。シロイヌナズナなどの LEAFY 遺伝子の相同部分からプライマーを合成し、逆転写 PCR 法で、リンゴから LEAFY ホモログをクローニングし AFL1AFL2 と名付けた。
  • AFL12 は他植物の LEAFY ホモログと相同性を持ち、最も高いものではポプラの LEAFY 相同遺伝子 PTLF にアミノ酸のレベルで 70% の相同性を示す。
  • リンゴゲノム中にAFL遺伝子は複数個存在する。さらに、AFL1 の発現が花芽分裂組織だけなのに対し、AFL2 は栄養成長組織や花器官、根でも見られる(図1)。花芽分化時の茎頂では AFL2 の発現が常時見られるが、AFL1 は、形態的変化に伴ったパターンを示す(図2)。
  • シロイヌナズナに導入し たAFL1AFL2 は早期開花し、ロゼット軸から直接単生花を生じさせる。特に AFL2 を導入したシロイヌナズナでは、単生花において形態異常の花が多数見られる(図3)。
  • AFL1AFL2 を導入したシロイヌナズナでは、AFL2 導入転換体の方がより強い表現型を示す。これらの結果は、両遺伝子のリンゴでの機能的な役割分担を示唆する。

成果の活用面・留意点

  • リンゴに AFL1又は AFL2 遺伝子を導入し、過剰発現させた場合、早期開花を誘導する可能性があり、リンゴの花芽形成の研究に利用できる。
  • AFL 遺伝子の働きを理解する上でゲノム中の複数個の AFL のクローニングを行い、AFL12 との相関を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1.RT-PCRによる各組織のAFL1、2 遺伝子発現の検出。 図2.RT-PCRによる発芽分化期のAFL1、2遺伝子発現の検出。

 

図3.AFL遺伝子を導入した組換え体シロイヌナズナ

その他

  • 研究課題名:花芽形成遺伝子導入による早期花成素材の開発
  • 課題ID:09-01-04-*-05-01
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:和田雅人、曹秋芬、古藤田信博、副島淳一、増田哲男
  • 発表論文等:1)Wada et al. (2002) Plant Mol. Biol. 49: 567-577
                      2)和田 (2001) 園学雑 70(別2):62-63