香りと食味が良いミカン新品種「たまみ」(カンキツ興津51号)

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要約

ミカン新品種「たまみ」は、「清見」に「ウイルキング」を交雑して育成した成熟期が1月中旬頃のミカンである。甘味が強く、オレンジ様の強い香りがあり、食味良好である。有核であるが、剥皮が容易で、じょうのう膜が薄く食べやすい。

  • キーワード:カンキツ、ミカン、新品種、良食味、オレンジ様芳香
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・素材開発研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

カンキツ類の消費拡大を図るために特徴のある多様な高品質品種の育成が望まれている。そこで、果肉が柔軟多汁で食味が良く、雄性不稔性を 持ち無核果になるが、剥皮しにくくて食べにくい「清見」を種子親に、香りと甘味が強く剥皮が容易であるが果実が小さい「ウイルキング」を花粉親にして交雑 を行い、香りと食味が良く、剥皮が容易でじょうのう膜が薄く、種子が少なくて食べやすい、ミカンタイプの品種育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1980年(昭和55年)に果樹試験場興津支場(現 果樹研究所カンキツ研究部興津)において「清見」に「ウイルキング」を 交雑して育成した系統である。1998年(平成10年)4月よりカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験に「カンキツ興津51号」として供試し、育成地を 含む30試験地において地域適応性の検討を行ってきた。2003年(平成15年)8月の平成15年度系統適応性・特性検定試験成績検討会において新品種候 補として適当であるとの結論を得た。
  • 果実は平均 150g位、果形は扁球形で果形指数 130位である。果頂部はやや凹んでいるが、果梗部は平らである。果皮は橙色で、果面はやや滑らかである。果皮の着色開始は11月上旬で、完全着色は12 月上旬である。果皮の厚さは2mm内外で、薄く柔らかいので剥皮は容易である。浮き皮はほとんど発生せず、発生しても軽度である。果肉は橙色で柔らかく、 果汁量は多い。じょうのう膜は薄く柔らかいので食べやすい。す上がりの発生はほとんどない。果汁の糖度は12%内外で高く、酸含量は1月中旬には 1.0%程度になる。オレンジ様の強い香気があり食味は良好である。成熟期は1月中旬頃である。含核数は平均7粒程度で、種子は単胚性である(表1、図1)
  • 樹勢は中庸で、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢は細く密生する。とげは普通無いが、若木ではまれに発生することがあ る。樹齢が進み樹勢が落ち着けば発生しなくなると考えられる。葉は小さく、細長い。花は小さく、単生する。花粉は少ないが、稔性率は高く、90%程度であ る。結実性は良好であるが、隔年結果性がやや高い。そうか病、かいよう病に対してはかなり強い。カンキツトリステザウイルスによるステムピッティングの発 生は軽度である。

成果の活用面・留意点

  • 1月以降も樹上越冬できる温暖なカンキツ栽培地域が栽培の適地である。
  • 比較的果実が小さいので、着果過多になると小さくなりすぎるとともに隔年結果が助長される。一方、着果が少なく大果になると果皮が厚くなり、果肉も硬くなるので適正な着果量に保つ。

具体的データ

表1 「カンキツ興津51号」の各試験地における特性 (平成15年度成績検討会資料より抜粋)

 

 図1 「カンキツ興津51号」の果実

 

その他

  • 研究課題名:早生カンキツ第5次育種試験、カンキツ第8回系統適応性検定試験
  • 課題ID:09-02-04-01-28-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1980~2003年度
  • 研究担当者:吉田俊雄、根角博久、山田彬雄、上野 勇、伊藤祐司、日高哲志、吉岡照高、中野睦子、七條寅之助、冨永茂人、中嶋直子、木原武士、國賀 武、村瀬昭治、瀧下文孝