マルボシヒラタヤドリバエの寄生がチャバネアオカメムシの寿命と生殖能力に及ぼす影響
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要約
果樹カメムシ類の重要天敵であるマルボシヒラタヤドリバエの寄生によりチャバネアオカメムシの生存率は雌雄成虫とも寄生後約2週間目から急速に低下し、生殖能力は雌成虫で寄生後約4日、雄成虫で約8日を過ぎると急激に失われる。
- キーワード:マルボシヒラタヤドリバエ、チャバネアオカメムシ、寄生、生殖能力
- 担当:果樹研・生産環境部・虫害研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・病害虫
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
マルボシヒラタヤドリバエは幼虫が発育している間、寄主であるカメムシを殺さない。このことは、カメムシが寄生された後しばらく繁殖活動
を継続する可能性を示唆している。そこで、本種の天敵としての役割を評価するために、本種の寄生がチャバネアオカメムシの寿命及び生殖能力に及ぼす影響を
明らかにする。
成果の内容・特徴
- 本種の幼虫は、22.5℃ではチャバネアオカメムシ成虫体内で約16日間発育した後、体外に脱出し、蛹化する(表1)。幼虫脱出後、寄主は例外なく死亡するため、非寄生個体に比べ寿命が大幅に短くなる。
- 本種の体サイズは雌雄間で有意な差はないが、雌寄主から脱出した個体の方が雄寄主から脱出した個体よりも体サイズが大きい傾向にある(表1)。
- 本種に寄生されたカメムシ雌成虫の生殖能力は、非寄生カメムシが長期にわたって生殖能力を維持するのに対し、寄生後4日を過
ぎると産卵雌率、産卵数、及び正常な胚子発生卵(眼点形成卵)の減少を伴って急激に衰退し、寄生14日後には完全に失われる。雄成虫では寄生8日後から生
殖能力が急激に減少する(図1、2)。
成果の活用面・留意点
- カメムシの寿命や生殖能力に及ぼす本種の寄生の影響が明らかになったことにより、本種の天敵としての働きを評価するための指標として活用できる。今後、野外での発生消長・寄生率などのデータを蓄積して、本種とカメムシの関係を解析する必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:土着天敵群の利用を核とした害虫防除技術の実証
- 課題ID:09-03-06-*-01-03
- 予算区分:持続的農業-IPM
- 研究期間:1999~2003年度
- 研究担当者:檜垣守男、足立 礎
- 発表論文等:Higaki (2003) Appl. Entomol. Zool. 38:215-223.