ミカンヒメコナカイガラムシの性フェロモンを利用した幼虫発生時期予測法

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要約

ミカンヒメコナカイガラムシ性フェロモン成分の構造は2,2-dimethyl-3-(1- methylethenyl)cyclobutanemethyl 3-methyl-3-butenate であった。この物質を利用してミカンヒメコナカイガラムシ幼虫発生時期の簡易予測が可能となる。

  • キーワード:ミカンヒメコナカイガラムシ、フェロモン、発生時期予測
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・虫害研究室
  • 農環研・生物環境安全部・昆虫研究グループ
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

ミカンヒメコナカイガラムシの幼虫発生時期は齢構成を把握することで予測できる。しかしながら本種は葉と葉の重なりの間など目立たないと ころに潜む性質が強く、低密度時には齢構成を把握するのは困難である。そこで、ミカンヒメコナカイガラムシの性フェロモンを解明し、フェロモンに誘引され た雄成虫の消長から幼虫発生時期を予測し、適期防除を簡易に行うための基礎とする。

成果の内容・特徴

  • 空気中に放出されたミカンヒメコナカイガラムシ性フェロモンを捕集剤で捕集し、ヘキサン抽出したものを各種クロマトグラフィーにより精製後、 GC-MS、C13NMRで解析し、その構造を2,2-dimethyl-3-(1-methylethenyl)cyclobutanemethyl 3-methyl-3-butenate と同定した (図1)。
  • フェロモンを濾紙に含ませ、風乾したものを黄色粘着トラップに貼り付けて露地に設置したところ、雄成虫が捕獲される(図2)。
  • 性フェロモンに誘引された雄成虫の捕獲時期から10℃以上の積算温度が302日度(雌成虫の産卵前期間の発育零点と有効積算温度)に達した時期と幼虫の発生時期とが一致する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 使用するトラップの形状と雄の捕獲効率との関係を調査する必要がある。
  • フェロモンを濾紙に含浸させたものでは長期間にわたり雄成虫を誘引することができないため、フェロモンを長期間安定して放出する封入剤の開発が必要である。

具体的データ

図1 ミカンヒメコナカイガラムシ性フェロモン構造

 

図2 露地におけるミカンヒメコナカイガラムシ消長(上)と雄成虫捕獲消長(下)。

 

その他

  • 研究課題名:カンキツ加害性コナカイガラムシ類の性フェロモンの解明
  • 課題ID:09-03-05-*-*-*
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1997~2000年度
  • 研究担当者:新井朋徳(果樹研)、杉江 元(農環研)、大平喜男(果樹研)、三代浩二(果樹研)
  • 発表論文等:1) Arai (2002) Appl. Entomol. Zool. 37(1): 69-72.
    2) Arai et al. (2003) J. Chem. Ecol. 29 (10): 2213-2223.
    3) 特許申請「新規エステル化合物及びその用途」(特願2002-328482)