食味が良い早生のタンゴール新品種「べにばえ」(系統番号:カンキツ口之津24号)

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

  タンゴール新品種「べにばえ」(系統番号:カンキツ口之津24号)*は、「(林温州・福原オレンジ)No.9」に「アンコール」を交雑して育成した早生のタンゴールである。外観は赤橙色、果面は平滑で綺麗である。有核であるが糖度が高く、食味良好で、じょうのう膜が薄く食べやすい。

  • キーワード:カンキツ、タンゴール、新品種、早生、高糖度
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・育種研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

  カンキツ類の消費拡大を図るために特徴のある多様な高品質品種の育成が望まれている。そこで、中生で、良食味、雄性不稔タイプの無核性かつ単胚性である「(林温州・福原オレンジ)No.9」を種子親に、中生で有核であるが、高糖度・良食味の早生カンキツが育成されやすい「アンコール」を花粉親にして交雑を行い、早生で、糖度が高く、食味が良いタンゴールタイプの品種育成を図る。

成果の内容・特徴

  • 1985年(昭和60年)に果樹試験場口之津支場(現果樹研究所カンキツ研究部口之津)において「(林温州・福原オレンジ)No.9」に「アンコール」を交雑して育成した品種である。1986年(昭和61年)にウンシュウミカンに高接ぎ、1989年(平成元年)に初結実し、一次選抜した。1996年(平成8年)4月からカンキツ第8回系統適応性・特性検定試験を実施し、2004年度(平成16年度)の新品種候補として適当であるとの結論が得られた。
  • 果実は扁円形で平均150gである。果皮は赤橙色~淡赤橙色、厚さ約2.3mmで薄いが、硬さはやや硬く、剥皮は中位である。果面は平滑で、11月中下旬に完全着色する。浮き皮は発生しない。果肉は濃橙色で、肉質及び果汁量は中位である(表1、図1)。じょうのう膜は比較的薄く食べやすい。果汁の糖度は平均13%で高く、減酸は比較的早く、アンコールに似た香りがあり濃厚な食味でおいしい。成熟期は12月下旬~1月である(表1)。含核数は平均5粒程度で、種子は単胚性である。
  • 樹勢は中庸で、樹姿は直立性と開張性の中間である。枝梢の長さ、太さは中位で、密生する。結実性は中位で、隔年結果性はやや強い。そうか病には強いが、かいよう病に対してはやや罹病性である。カンキツトリステザウイルスによるステムピッテングは発生しない。

成果の活用面・留意点

  • 果頂部のヘその部分から亀裂が発生し裂果しやすい傾向があるため、摘果の際、果頂部に亀裂が発生しているものから優先的に摘果する。
  • 樹姿が直立傾向にあると着花・結実性が劣るので、未結果時から樹が開張するよう整枝する。
  • わが国のほとんどのカンキツ栽培地帯に適する。

具体的データ

表1「カンキツ口之津24 号」の各試験地における特性(平成15 年度成績検討会資料より抜粋)

 

図1 「カンキツ口之津24 号」の果実

その他

  • 研究課題名:カンキツ第8回系統適応性・特性検定試験
  • 課題ID:09-02-04-01-29-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1984~2002年度
  • 研究担当者:松本亮司、吉岡照高、國賀 武、奥代直巳、高原利雄、稗圃直史、山本雅史、三谷宣仁、今井 篤、
                      吉永勝一、内原 茂、山田彬雄、浅田謙介、池宮秀和

*2005年9月16日付けでカンキツ口之津24号は「べにばえ」と命名され(タンゴール農林10号)として登録・公表された。