ニホンナシ「豊水」の親品種の同定
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要約
交配親が不明であるニホンナシ主要品種「豊水」の交配年前後の交配組合せに関する果皮色、自家不和合性遺伝子、61種のSSRマーカー及び葉緑体DNAの分析から、「豊水」の種子親は「幸水」、花粉親は「平塚1号」であると判断される。
- キーワード:SSRマーカー、自家不和合性遺伝子、ニホンナシ、DNA鑑定
- 担当:果樹研・遺伝育種部・ナシ・クリ育種研究室
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・育種
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
育成されて約半世紀が経過する「豊水」は、今では、ニホンナシ生産量の約1/4を占める主要品種となっている。また、「豊水」は品質、栽培性ともに優れるために育種母本として頻繁に用いられている。しかし、当初発表された「豊水」の交配組合せ(「平塚7号(リ-14)」×「八雲」)には疑問が持たれており、果皮色、自家不和合性の調査結果や最近のDNA解析からも、現在では「豊水」の親品種は不明とされている。そこで「豊水」の親品種の同定を試みた。
成果の内容・特徴
- 「豊水」が交配された1954年前後(1953年から1955年)に、ニホンナシの品種育成のために行われた交配組合せは84である。
- 「豊水」の親品種として可能性がある84交配組合せについて、果皮色の調査、自家不和合性遺伝子及び61種類のSSRマーカーによるDNA鑑定の結果、「幸水」と「平塚1号(イ-33)」の組み合わせのみがこれらの調査において矛盾が無い。
- 種子親からのみ遺伝する葉緑体のDNA trnL-F 領域を調査したところ、「豊水」の葉緑体のDNA は「幸水」と一致する(図1)。
- これらの調査を総合した結果、「豊水」の交配組合せは種子親「幸水」、花粉親「平塚1号」(写真1)である可能性が高い(図2)。
成果の活用面・留意点
- SSRマーカーによる品種判別は、ニホンナシの親品種の正確な同定に有効である。
- 「豊水」も「幸水」と同じく「二十世紀」の後代であることが明らかとなり、「豊水」を親とする品種育成にはこの点を考慮する。
具体的データ



その他
- 研究課題名:落葉果樹類の分子マーカーの作出
- 課題ID:09-02-07-*-05-04
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2000~2004年度
- 研究担当者:澤村 豊、齋藤寿広、高田教臣、山本俊哉、木村鉄也(種苗管理セ)、林 建樹、壽 和夫
- 発表論文等:1)Sawamura et al. (2004)J.Japan.Soc.Hort.Sci. 73(6):511-518.