特定のカンキツトリステザウイルス分離株に免疫性のキンカン

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要約

  キンカンはカンキツトリステザウイルス(CTV)に感受性であるが、「ニンポウキンカン」、「マルキンカン」、「四倍体ニンポウキンカン」及び「ぷちまる」は弱毒系の2分離株(M12、M16A)に対して免疫性である。

  • キーワード:キンカン、カンキツトリステザウイルス、CTV、免疫性
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・素材開発研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

  キンカンはCTVに感染すると考えられていたが、キンカン品種「ぷちまる」(「ナガキンカン」×「四倍体ニンポウキンカン」)では弱毒株のM16Aの感染が認められなかった。そこで、「ぷちまる」のほか数種類のキンカンについて病原性の異なる数種類のCTV分離株を接種し、感染の有無を検定する。

成果の内容・特徴

  • 「ぷちまる」の2年生ラフレモン台CTVフリー苗3個体ずつに弱毒株のM15AとM16Aを接ぎ木接種し、ELISAにより感染の有無を検定した結果、M15Aについては検出されるが、M16Aは検出されない(表1)。
  • 「ぷちまる」の2か月生ラフレモン台CTVフリー苗を供試してシードリングイエローズ系強毒株(KY・OT、KS3A2、S5A)、ステムピッティング系強毒株(HS34、No.1595)及び弱毒株(HM55、M11、M12、M15A、M16A、M23A)をそれぞれ1~3個体ずつに接ぎ木接種し、感染の有無を検定した結果、M16Aのほかに弱毒株のM12も検出されない。弱毒株のM23A接種ではELISAの反応が弱く明確な判定は困難である。これらの個体の台木部では感染が確認されている(表2)。
  • 「ニンポウキンカン」、「マルキンカン」、ナガバキンカン2系統(84592、86212)、「二倍体マメキンカン」、「四倍体ニンポウキンカン」及び「早生キンカン」の11か月生の珠心胚実生苗を供試し、シードリングイエローズ系強毒株(S5A)、ステムピッティング系強毒株(HS34、No.1595)及び弱毒株(M12、M15A、M16A、M23A)をそれぞれ2~3個体ずつに接ぎ木接種し、感染の有無を検定した結果、ナガバキンカン2系統、「二倍体マメキンカン」及び「早生キンカン」の珠心胚実生では供試した7種類の分離株のいずれについても検出され、感染が認められる(表3)。
  • 「ニンポウキンカン」、「マルキンカン」及び「四倍体ニンポウキンカン」の珠心胚実生では、弱毒株のM12とM16Aは検出されないため感染が確認できず(表3)、これらのウイルス分離株に対して免疫性であると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 「四倍体ニンポウキンカン」は「ニンポウキンカン」の実生苗の中から選抜されたもので、有性胚実生か珠心胚実生か識別していない。

具体的データ

表1 CTV弱毒株M15A及びM16Aの接ぎ木接種に対する「ぷちまる」の反応

 

表2 各種CTV分離株の接ぎ木接種に対する「ぷちまる」の反応

 

表3 キンカン類における各種CTV分離株zの感染状況

その他

  • 研究課題名:カンキツトリステザウイルス免疫性育種素材の選抜
  • 課題ID:09-01-03-*-12-04
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:吉田俊雄、中嶋直子、國賀 武