温州萎縮ウイルス(SDV)の簡易迅速検定キットの開発

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要約

簡易磨砕容器および特異性の高いモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト法による検定用プレートの使用により、カンキツの重要ウイルスである温州萎縮ウイルスを生産者等が圃場で検出できる。

  • キーワード:カンキツ、温州萎縮ウイルス、SDV、イムノクロマト法
  • 担当:果樹研・カンキツグリーニング病研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫、共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

温州萎縮ウイルス(SDV)は、カンキツの樹勢と果実の収量・品質を低下させる重要ウイルスであり、土壌伝染するので、一度圃場に定着すると防除が困難である。これまで用いられてきたエライザ法や遺伝子増幅法による検出は、検査機関でのみ実施可能であった。そこで、より簡便迅速な検出法を開発し、生産者が自ら圃場で本ウイルスを検出することを可能にする。

成果の内容・特徴

  • 本キットの検定用プレートは、カンキツ栽培で問題となるSDVに特異的に反応するモノクローナル抗体(福岡県農業総合試験場果樹苗木分場作製)を使用しており、イムノクロマト法(図1)で、SDVに感染した葉の汁液と反応して、ラインを生じる(図2)。
  • 新たに開発した簡易磨砕容器(図3)はソフトラバー製で、内側に溝が切ってあるので、容器を指で挟み込むことにより、圃場で葉は簡単に磨砕される。
  • さらに操作性を向上するため、製品には最適化された磨砕用緩衝液(0.1M クエン酸緩衝液、pH7.0)と葉を簡易磨砕容器に入れる竹串が入っている(図4)。本キットを用いた検定では、磨砕液を検定用プレートに滴下後15分以内にレファレンスライン(R)とテストライン(T)の2本の線が出現した場合、陽性と判断する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本キット(SDVクロマト)はミズホ メディー株式会社と共同研究で開発し、同社から市販されている。箱に明記してある期限内に使用する。
  • 本キットでSDVを検出するためには、春枝の新芽、新梢先端、あるいは展葉直後の新葉を用いる。
  • 本キットでは、カンキツモザイクウイルスなどSDVの系統も検出できるが、重要な検定は、検査指導機関と相談して、より精密な手法である遺伝子増幅法などを随時併用することが望ましい。

具体的データ

図 1 イムノクロマトの反応原理模式図

図2 SDV検定用プレートに磨砕液を滴下(矢印)し、陽性だとRとTの2カ所にラインが現れる。

図 3 簡易磨砕容器

図 4 SDVイムノクロマト検定キット完成品

その他

  • 研究課題名:気候変動に対応したカンキツグリーニング病の分布拡大阻止対策の構築
  • 課題ID:215-a
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:岩波 徹、草野成夫(福岡農総試果樹苗木)、井手洋一、田代暢哉(佐賀果試)、三森智浩、
                      楢原謙次(ミズホ メディー)
  • 発表論文等:草野(2006).植物防疫 60:491-497.