液体クロマトグラフィー-質量分析法を用いたカロテノイドの一斉定量分析方法

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要約

大気圧化学イオン化法を用いた液体クロマトグラフィー-質量分析法により、植物の生合成経路上の18種類のカロテノイドを高感度かつ一斉に定量できる。

  • キーワード:LC-MS、一斉定量分析、カロテノイド、カンキツ
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

一般に、カロテノイドの定量分析には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が汎用されている。しかし、カンキツ果実のように、複雑なカロテノイド組成を有する植物中のカロテノイドをHPLCで定量するには、クロマトグラフィーによる厳密な分離が必要であり、また検出感度に限界がある。高速液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC竏樽S)は、質量を検出するため厳密な分離が不要で、かつ高感度であるが、定量性の確保は容易ではない。このため、植物中の主要なカロテノイド生合成経路上にある多種類のカロテノイドを安定して定量分析した例はない。そこで、果実中のこれらカロテノイドの一斉定量分析が可能なLC-MS分析法を開発する。

成果の内容・特徴

  • このLC-MS分析法により、植物の主要なカロテノイド生合成経路上にある18種類のカロテノイドを70分以内に分析できる(表1)
  • カロテノイド分析試料は、0.1%ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含有するジエチルエーテル-メタノール(7:3, 体積比)で植物からカロテノイドを抽出後、20%水酸化カリウム含有メタノールでけん化したものを用いる。
  • 液体クロマトグラフィー(LC)による分離は、C30カラムを用い、3種類の溶液(メタノール、t-ブチルメチルエーテル、水)の濃度勾配溶出により行う。質量分析(MS)による検出は、大気圧化学イオン化法(APCI)を用いた正イオンモードにより行う。
  • 定量分析はSIMモード(物質固有のイオンを選択的に検出するモード)にて行い、内部標準法により定量する。内部標準物質は、人工色素であるcitranaxanthinを使用する。分析感度は従来のHPLC法に比べて大幅に上昇する(表1)。分析の精度(測定値のばらつき)は変動幅が十分低く(5.4%以下)、また真度(真の含量と測定値の相違の程度)は良好(90~106%)である(表1)。
  • この分析で試料を定量する際は、まず、ピークの同定を行う。カンキツ果実(果皮及び果肉)中に含まれるカロテノイドの同定は、マススペクトル、紫外可視吸収スペクトル、標準品との保持時間の一致により行う。カンキツ果実において同定されたカロテノイドは、表2及び図1に示す18種類である。
  • 本分析法は、約400検体のカンキツ果実(果皮・果肉)中のカロテノイドの定量分析をルーチンで行える堅牢性を有している。

成果の活用面・留意点

  • この定量分析法をカンキツ果実以外の試料に応用する際には検出されるピークの同定が必要である。ピークの同定は、質量分析、吸収スペクトル、保持時間、標品との共溶出等により行う。

具体的データ

表1 定量法の信頼性

表2 カンキツ果実中のカロテノイドの同定

図1 カンキツ(ポンカン)果実のカロテノイド抽出物のLC-MSクロマトグラム

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 課題ID:312-c
  • 予算区分:二次代謝
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:松本光、生駒吉識、加藤雅也
  • 発表論文等:Matsumoto et al. (2007) Journal of Agricultural and Food Chemistry (印刷中).