国内カンキツ樹からのカクヘキシア病病原ウイロイドの検出と遺伝子診断
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要約
海外では重要病害として知られるが国内での発生は確認されていなかったカンキツカクヘキシア病の病原であるホップ矮化ウイロイドの変異株は国内に局在して分布し、遺伝子診断法によって特異的に検出できる。
- キーワード:カンキツ、カクヘキシア病、ホップ矮化ウイロイド、遺伝子診断、発生分布
- 担当:果樹研・カンキツグリーニング病研究チーム(兼:果樹病害研究チーム)
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・病害虫
- 分類:技術及び行政・普及
背景・ねらい
マンダリン類などに樹脂の漏出と樹勢衰弱をもたらすカンキツカクヘキシア病はホップ矮化ウイロイド(HSVd)の変異株によって引き起こされる。海外では本病原ウイロイドが広く分布するが、国内での発生は未報告で植物検疫上の特定重要病害虫の一つに指定されてきた。近年、国内のカンキツには多様なウイロイドが分布する状況が明らかとなっていることから、カクヘキシア病の病原ウイロイドについても、特異的診断法を開発してその検出を可能とし、国内での分布状況を明らかにする。
成果の内容・特徴
- HSVdは約300塩基のRNA分子が本体であるが、カンキツカクヘキシア病を引き起こすHSVd変異株と引き起こさない変異株との遺伝子間に見られる5塩基の特徴的な違いを特異的に検出できる独自プライマーCCV-M1/P1が構築され、本プライマーを利用したRT-PCRによる遺伝子診断法により本病原ウイロイドを特異的に簡易に検出できる(図1)。
- 特異的遺伝子診断法により検定した国内の573樹(研究機関の保存樹43樹、一般圃場530樹)のうち、13樹からカクヘキシア病の病原ウイロイドが検出され、そのうち10樹が果樹研究所の保存樹、3樹が農家圃場の栽植樹である。生物検定によっても病徴が認められ、本病原ウイロイドが国内に局在して分布することを初めて確認している(表1)。
- カクヘキシア病の病原ウイロイドが検出される品種は非感受性のレモンやスイートオレンジなどが多く、その他、系統によって感受性とされるウンシュウミカンである(表1)。ウンシュウミカン2樹(Satsuma Gigante、上野早生)ではカクヘキシア病に特徴的な樹脂の漏出等の症状が確認されないことから、その実害は不明である。
成果の活用面・留意点
- 本遺伝子診断法は、保毒の有無を1日程度で判定できるため、輸入検疫や国内検疫における保毒樹の早期診断、無毒母樹の作出確認に簡便に利用できる。
- 保毒穂木が流通することになれば、容易に分布の拡大を招くので注意が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:果樹の紋羽病等難防除病害抑制のための要素技術の開発
- 課題ID:214-p
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:伊藤隆男、古田貴音(広島農セ)、伊藤伝、井坂正大(横浜植防)、井手洋一(佐賀果試)、
金好純子(広島農セ)
- 発表論文等:Ito et al. (2006) J. Gen. Plant Pathol. 72: 378-382