ミヤコカブリダニの定着を促進させる人工素材

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要約

微細構造を有する遮光ネットと細目ウレタンフォームはミヤコカブリダニの好む微小生息空間を提供し、ミヤコカブリダニの定着性を高める。遮光ネットでは素材内部に、細目ウレタンフォームでは素材下にカブリダニが多く定着する。

  • キーワード:ミヤコカブリダニ、天敵、定着促進、人工素材、生息空間
  • 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ナシなどの果樹ではシンクイムシ類等に対する交信撹乱法を中心とした環境調和型防除体系が構築されてきているが、減農薬に伴うハダニ類の突発的発生が懸念されるため、天敵を活用した安定的密度抑制技術の確立が求められている。ハダニの有力な天敵であるカブリダニ類は葉脈部の微細構造など微小生息空間を好むことから、微細構造を利用してカブリダニ類の定着性を高め、密度を増強できる可能性がある。また、自然物のみならず人工物に由来する微細構造にも選好性が認められれば,それを利用した汎用的防除資材の開発が期待できる。そこで微細構造を有する人工構造物の中からカブリダニ類が多く定着する素材を探索・選定する。

成果の内容・特徴

  • プラスチック板上に各種素材を並べ、その中心にスパイカルR(ミヤコカブリダニ製剤)を接種し、24時間後にそれぞれの素材に定着していたミヤコカブリダニ個体数を比較したところ、供試した22種類の素材のうち、人工芝、研磨タワシ、毛糸、フランネル、ファイトトラップ(面ファスナーに毛糸を絡めたカブリダニ捕獲器)、遮光ネット、細目ウレタンフォームにおいて多数のカブリダニが認められる(図1)。
  • これらのうち、遮光ネットと細目ウレタンフォームでは特に多くの個体が定着する傾向がみられる(図1)。
  • 遮光ネットでは素材内部に存在する個体の割合が高く、細目ウレタンフォームでは素材下のプラスチックとの隙間に存在する個体の割合が高い(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 遮光ネットや細目ウレタンフォームなどの人工素材はミヤコカブリダニの好む微小生息空間を提供するので、他のカブリダニ類にも有効と考えられる。
  • 遮光ネットは素材内部にカブリダニを保持することから、個体数調査用トラップとしても活用できる。またカブリダニが定着した遮光ネットを野外や施設に設置することにより接種的放飼が可能となる。

具体的データ

図1 定着数の多かった8素材でのミヤコカブリダニ平均個体数(横棒は標準誤差)。プラスチック板上に各種素材を同一円周上に並べ,その中心にスパイカル18ml(平均約53頭のミヤコカブリダニを含む)を接種し,25°C16L8D条件下で24時間経過した後の定着数。反復数は20。素材間の異なる文字間で有意差あり(Steel-Dwass法,p<0.05)。

図2 各種素材下のプラスチック板上(■)、および素材内部(□)に定着していたミヤコカブリダニ個体数の比率。括弧内の数字は両個体数の合計。反復数は20。

その他

  • 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
  • 課題ID:214-n
  • 予算区分:政府受託(生物機能)
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:足立礎、外山晶敏、檜垣守男、柳沼勝彦、三代浩二、川島充博(千葉大)
  • 発表論文等:Kawashima et al. (2006) Appl. Entomol. Zool. 41: 633-639