簡易で迅速なカンキツのDNAマーカー分析法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

ステンレスビーズによる凍結破砕と改良型PCR反応系を利用することで、カンキツのDNAマーカー分析を迅速かつ低コストで行うことができる。

  • キーワード:カンキツ、DNAマーカー、早期選抜、DNA分析、スクリーニング
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム、近中四農研・品種識別・産地判別研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カンキツ育種の効率化を目的に、DNAマーカーの開発と利用が進められている。特定の形質と連鎖したDNAマーカーを用いて早期選抜を行うことで、育種効率の大幅な改善が期待されるが、カンキツ組織は固く、DNA抽出には労力を要する。また組織中の夾雑物によりPCR反応がしばしば阻害され、結果の解析を困難にする場合がある。夾雑物による影響を回避するためにはDNAを高度に純化する必要があり、分析のための時間と経費を押し上げる要因となっている。そのため、迅速、低コスト、かつ信頼性の高いDNAマーカー分析法の開発が望まれてきた。

成果の内容・特徴

  • 100mg程度のカンキツ生葉を、ステンレスビーズ(φ6mm)を用いて凍結破砕し、CTAB法によりDNAを抽出する。その遠心上清を一部取って水で希釈し、改良型PCR反応系(S社)でPCR反応を行い、得られる増幅産物の性状からDNAマーカー型を判定する(図1)。
  • 葉の粗抽出液を希釈してPCR反応の鋳型とするために作業時間が短く、一日に20検体以上、週に100検体以上を処理することが可能である。
  • 生葉100mgあたり19μg程度のDNAが得られ、異なるマーカーによる複数回の繰り返し分析にも対応することが出来る。
  • 抽出したDNAをさらに純化するための高価な試薬やキット等を必要としないため、迅速で低コストである。

成果の活用面・留意点

  • DNAマーカーを利用したカンキツの早期選抜に利用可能である。
  • 2kb以下の増幅産物を与えるPCRプライマーの利用が望ましい。
  • 本法で得られるPCR産物の電気泳動像は多少不鮮明になる傾向があり、明瞭な違いを持つDNAマーカーの分析に適する(図2a)。
  • 得られた粗抽出液をクロロフォルムで抽出した後にエタノール沈殿によりDNAを回収し、これを少量の水に溶解してPCR反応の鋳型とすると、鮮明な電気泳動像が得られ、RAPD反応などによる検定にも利用できる(図2b)。
  • カンキツ以外の果樹から抽出した、PCR反応を阻害する夾雑物を含んだDNAの分析にも利用可能である。

具体的データ

図1 本法の分析手順

図2 カンキツDNAマーカーの分析例

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
                      農産物や加工食品の簡易・迅速な品種識別・産地判別技術の開発
  • 課題ID:221-j、324-a
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:清水徳朗(近中四農研併任)、遠藤朋子、島田武彦、藤井 浩、西川芙美恵