無核紀州型無核性と連鎖するDNAマーカー

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要約

無核紀州の有する無核性が分離した交雑集団のRAPD解析から作成したSTSマーカーを利用し、葉のDNA分析を行うことにより、無核紀州型の無核性を有する個体を早期に推定することができる。

  • キーワード:カンキツ、DNAマーカー、無核性、無核紀州、DNA診断、早期選抜
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カンキツ無核紀州は受精しても接合体が発育しない完全無核性を有している。この無核性は単一の優性遺伝子に支配されていると考えられ、無核性カンキツの交雑母本として利用されている。 無核性は商品価値を高める重要な要素であるが、後代での無核性個体の選抜には結実を待つ必要があり、長い育種年限を必要とする。そこで、無核紀州が有する無核性と連鎖したDNAマーカーを開発することで、幼苗段階で無核性個体を選抜し、無核紀州型の無核性を有するカンキツ育成の効率化を図る。

成果の内容・特徴

  • 無核紀州を交雑親とする無核性の分離集団から、無核紀州型の無核性と連鎖するRAPDマーカーを見出し、さらにこれをクローニングして塩基配列を決定することで開発したSTSマーカー(C68.1、C68.2)である。
  • 葉などの組織から抽出したDNAを用い、このSTSマーカーを用いたPCR反応により生じる1.9kbの増幅産物を確認することで、結実前に無核性の個体を推定することが可能であり、無核性カンキツの早期選抜に利用できる。
  • 作製したSTSマーカーは元のRAPDマーカーと同じ分離を示す(表1)。
  • 無核紀州から育成された無核性カンキツ「かんきつ中間母本農5号」、「かんきつ中間母本農6号」、「サザンイエロー」もこのSTSマーカーを有しており(図1)、これらを母本とする実生集団での識別に利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 無核紀州型無核性品種を交雑親としない実生集団での無核性個体の識別には利用できない。
  • 本STSマーカーは無核紀州由来の無核性と約18 cMで連鎖すると推定される相引の優性マーカーである。
  • ウンシュウミカン、ポンカン、スイートライムなどの一部の有核品種もこのマーカーを有していることから、交雑組合せによっては期待通りの識別能力が得られない場合がある。そのため、このマーカーを持たない品種と無核紀州とを交雑して得られる実生集団に利用することが望ましい。

具体的データ

表1 無核性の分離集団におけるRAPDマーカーとSTSマーカーの分離比

図1 カンキツ属とその近縁種におけるSTSマーカーの有無

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:形態・生理
  • 研究期間:2001~2005年度
  • 研究担当者:清水徳朗、平林利郎、吉田俊雄、根角博久