エチレンによる硬肉モモ果実の軟化及び軟化関連遺伝子発現の制御
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
硬肉モモ果実の軟化及び軟化に関連する細胞壁代謝関連遺伝子の発現はエチレンによって制御されている。また、硬肉モモ果実の軟化速度はエチレン濃度に依存する。
- キーワード:エチレン、モモ、果肉軟化、遺伝子発現
- 担当:果樹研・果実鮮度保持研究チーム
- 連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
一般に栽培されているモモの果実は、成熟・老化に伴い、エチレンを生成し果肉が急激に軟化するため、高品質果実を流通・販売するためには、軟化を抑制する技術の開発が重要である。しかしながら、モモではエチレン作用阻害剤である1-MCPによる軟化抑制がほとんど認められないなど、果肉軟化とエチレンとの関係については不明な点も多い。一方、硬肉モモは、成熟果実におけるエチレン生成が遺伝的に抑制されていることから、果肉が硬く収穫後もほとんど軟化しない。しかし、エチレンに対する感受性は一般のモモと同様に保持しており、外的なエチレンに反応して軟化する。そこで、硬肉モモの果肉軟化制御機構を明らかにするため、硬肉モモ「まなみ」に対して外的なエチレン処理を行い、果肉軟化と細胞壁代謝関連遺伝子の発現を解析する。
成果の内容・特徴
- 硬肉モモの果実は、0.1ppmから100ppmのエチレンを処理すると12~24時間後から軟化する(図1)。
- 硬肉モモの果実は、0.1ppmから100ppmの範囲において、エチレン処理濃度が高いほど速く軟化する(図1)。
- エチレン処理による硬肉モモ果実の軟化は、処理を停止すると約24時間後から抑制される(図2)。
- 一般的なモモである「あかつき」は収穫後急激に軟化するが、硬肉モモである「まなみ」はほとんど軟化しない(図3A)。細胞壁代謝に関わるタンパク質をコードする遺伝子のうち、ポリガラクツロナーゼ(PpPG)、アラビノフラノシダーゼ/キシロシダーゼ(PpARF/XYL)、及びエクスパンシン(PpExp3)の発現は、「あかつき」では認められるが、「まなみ」ではほとんど認められない(図3B)。
- 硬肉モモ果実において、PpPG、PpARF/XYL、PpExp3の発現量は、エチレンを処理すると増加し、処理を停止すると減少する(図4)。
- 以上の結果から、硬肉モモ果実の軟化にはエチレンが必要であり、軟化速度はエチレンの濃度に依存している。また、PpPG、PpARF/XYL及びPpExp3はエチレンに応答して発現する細胞壁代謝関連タンパク質をコードする遺伝子であることから、果肉軟化に関与する遺伝子と推定される。
成果の活用面・留意点
- 本研究の成果は、硬肉モモの効率的な人為的軟化技術開発の基礎的な知見となる。
具体的データ
その他
- 研究課題名:果実の輸出等を促進する高品質果実安定供給のための基盤技術の開発
- 課題ID:313-a
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:羽山裕子、伊東明子、樫村芳記
- 発表論文等:Hayama et al. (2006) J. Exp. Bot. 57(15):4071-4077.