カンキツ属果実におけるカロテノイドの集積特性

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要約

カンキツ属品種の多くは果肉と果皮のカロテノイド集積特性が類似しており、ミカン区に属する多くの品種で果肉と果皮のβ-クリプトキサンチン含有量が高い。また、一部のダイダイ区とミカン区の品種で果肉と果皮のビオラキサンチン含有量が高い。

  • キーワード:カンキツ、カロテノイド、β-クリプトキサンチン
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カロテノイドは、カンキツ果実の色や栄養・機能性に関連する重要な成分である。近年、健康指向が高まっている状況の中、β-クリプトキサンチン(BCR)等のカロテノイドを高含有する果実の開発が期待されている。そこで、カンキツ果実におけるカロテノイド高含有化技術の開発に有用な情報を得るため、田中長三郎の分類にしたがって選定したカンキツ属のライム区、シトロン区、ザボン区、ダイダイ区、ユズ区、ミカン区に属する合計39品種について、含有量が高い傾向にあるフィトエン(PHY)、BCR、ビオラキサンチン(VIO)に着目して、カロテノイドの集積特性を解明する。

成果の内容・特徴

  • 39品種のPHY、BCR、VIO含有量の季節変化パターン(10月~2月までの変化)は、クラスター分析により、いずれのカロテノイドでも、低レベル型(含有量の上昇傾向が小のパターン)、中レベル型(上昇傾向が中のパターン)、高レベル型(上昇傾向が大のパターン)の3種の季節変化類型に分類できる(データ略)。
  • PHY、BCR、VIOの季節変化類型を用いてクラスター分析を行い、これらのカロテノイドの季節変化類型の組合わせが類似した品種同士を集めると、果肉では39品種は4品種群(JS-I~IV)に分類される。カロテノイド集積プロフィールは、JS-Iでは低含有型、JS-IIではVIO中含有型、JS-IIIではVIO高含有型、JS-IVではVIO中含有、PHY、BCR高含有型として特徴づけられる(図1)。
  • 果皮では5品種群(FL-I~V)に分類され、カロテノイド集積プロフィールは、FL-1では低含有型、FL-IIではPHY高含有型、FL-IIIではVIO高含有型、FL-IVではVIO、BCR高含有型、FL-VではPHY、VIO、BCR高含有型として特徴づけられる(図2)。
  • 39品種の大部分では、果肉と果皮のカロテノイドの集積特性が類似しており、「BCRとVIOの含有量が果肉で高くない品種群(JS-IとII)では果皮(FL-IとII)でも高くない」、「VIOの含有量が果肉で高い品種群(JS-III)では果皮(FL-IIIとIV)でも高い」、「BCRの含有量が果肉で高い品種(JS-IV)では果皮(FL-IVとV)でも高い」という特徴を有する(表1)。
  • BCRやVIOの含有量が高くない品種群のほとんどは、ライム区、ザボン区、ダイダイ区、ユズ区に属する。VIOの含有量が高い品種群は、一部のダイダイ区の品種(トロビタオレンジ、ワシントンネーブルオレンジ、タンカン)とミカン区の品種(タチバナ、シークワシャー)である。BCRの含有量が高い品種群のほとんどは、ミカン区に属する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の成果は、カロテノイド集積の品種間差の原因となる生理機構の解明に関する研究やカロテノイド含量改変のための交配母本の選定に役立つ基礎的データとなる。

具体的データ

図1 JS-I~IVにおけるフィトエン(PHY)、β-クリプトキサンチン(BCR)、ビオラキサンチン(VIO)含有量の季節変化(果肉)

図2 JS-I~IVにおけるフィトエン(PHY)、β-クリプトキサンチン(BCR)、ビオラキサンチン(VIO)含有量の季節変化(果皮)

表1 果肉と果皮の間のカロテノイド集積特性の関係

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 課題ID:312-c
  • 予算区分:二次代謝産物
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:生駒吉識、松本光、加藤雅也、國賀武、中嶋直子、吉田俊雄
  • 発表論文等:Matsumoto et al. (2007) Journal of Agricultural and Food Chemistry. 55: 2356-2368