DNAマーカー型から食品に含まれる品種を推定するソフトウエアMixAssort

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要約

ソフトウエアMixAssortは、DNAマーカーによる品種ごとのタイピングデータと複数品種が原材料として混合されている加工食品のタイピングデータから、加工食品に含まれる原材料品種を推定し、DNAマーカーの種類や生物種を問わず利用できる。

  • キーワード:DNAマーカー、ソフトウエア、加工食品
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム、近中四農研・品種識別・産地判別研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

育成者権の保護と不正表示の防止を目的に、多数の農作物で品種判別を目的としたDNAマーカーの開発が行われ、生鮮農産物の品種判別だけではなく、加工食品の原材料品種の判別に関する研究も進められている。加工食品には、多くの場合、複数の原材料品種が使用されている。このため、加工食品にDNAマーカーを適用した場合、複数品種由来のマーカー型が合成されて現れる。したがって、加工食品の原材料品種の判定を行うには、加工食品のDNAマーカー型と事前に調べておいた原材料品種ごとのDNAマーカー型とを比較して、加工食品に含まれていても矛盾のないDNAマーカー型を持つ原材料品種を論理的に推定するという作業が必要になる。しかし、DNAマーカー数や原材料品種数、調査する加工食品数が多いと、比較作業に時間がかかる。そこで、加工食品と原材料品種のDNAマーカー型のデータから、加工食品に含まれる原材料品種を簡単な操作で迅速に判定するソフトウエアを開発する。

成果の内容・特徴

  • ソフトウエアMixAssort(ミックスアソート)はある農作物を原材料とする加工食品について、品種ごとにDNAマーカーを適用して得られたマーカー型と同じDNAマーカーを加工食品に適用して得られたマーカー型とを入力データとして(表1)、該当する加工食品の原材料品種と推定される品種(表2の枠で囲われた品種)をもれなく出力する。
  • MixAssortは、果汁、野菜汁などのジュースや小麦粉、米粉、そば粉、はったい粉といった粉食品など、複数の品種が混合されていることが想定される加工食品のDNAマーカーによる品種判別に適用できる。
  • MixAssortはSSRマーカーのような数値表記のマーカーでも文字表記のマーカーでも利用可能であり、優性マーカーと共優性マーカーの違いや生物種および倍数性を問わずに利用できる。

成果の活用面・留意点

  • ミックスジュースのように複数の樹種の果汁が混合されている場合は、生物種ごとのDNAマーカー型のデータについて、本ソフトウエアを適用すると便利である。
  • 本ソフトウエアは、各DNAマーカーあたり、52のDNAマーカー型まで対応する。
  • 果樹研究所ホームページ(http://www.fruit.affrc.go.jp/)から本ソフトウエアをダウンロードできる。
  • 本ソフトウエアはMicrosoft® Visual Studio® 2008を用いて作成されており、Microsoft® Excel 2003またはExcel 2007をインストールしたMicrosoft® Windows®マシン上で動作する。

具体的データ

表1 入力データの例;複数の原材料品種から製造されている食品Aとその原材料である農作物12品種について、10種類のDNAマーカーを適用して得られたマーカー型の一覧表

表2 MixAssortの動作原理を示した表;表1について、マーカーごとに食品Aのマーカー型と各品種のマーカー型とを比較し、食品Aのマーカー型と矛盾する品種のマーカー型を白抜き文字で示す。すべてのマーカーについて食品Aのマーカー型と矛盾しない品種(品種06、品種11)を枠で示す。

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:基盤研究費、委託プロ(食品)
  • 研究期間:2008年度
  • 研究担当者:藤井 浩、藤田由美子(近中四農研)
  • 発表論文等: 農研機構職務作成プログラム登録番号 機構-D04 藤井浩、山下浩之、藤田由美子、
                        矢野博、村上恭子、本田雄一、十鳥秀樹 (2009) DNAマーカーによるタイピングデータを用いて
                        複数品種が混合されている食品に含まれる原材料品種を判定するソフトウエアの開発と
                        小麦加工品への適用、 DNA多型、17: 96-101.