ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプの組合せは果皮アントシアニン含量に影響する

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要約

ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプは少なくとも6種類存在する。また、アントシアニン合成誘導機能のあるハプロタイプが2つ存在する個体は果皮アントシアニン含量が高い傾向にある。

  • キーワード:ブドウ、ハプロタイプ、果皮アントシアニン含量
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 代表連絡先:電話 成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

果皮色はブドウの品質を決める重要な果実形質の一つであるが、近年の急速な気候温暖化にともない、産地ではブドウの着色不良が問題となっている。これまでに、ブドウ果皮の着色(アントシアニン生合成)にはMyb様転写因子遺伝子VvmybA1が関与すること、着色の有無はVvmybA1遺伝子型によって決定される(平成19年度果樹研究成果情報)ことが明らかになっている。また、ブドウにはVvmybA1以外にもアントシアニン合成誘導機能のあるMyb様転写因子遺伝子がいくつか存在する。しかし、同一の染色体上に存在する複数の遺伝子座における、これらの対立遺伝子の組合せ(ハプロタイプ)は未解明な部分が多く、ハプロタイプの組合せが果皮アントシアニン含量に与える影響も不明である。そこで、ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプを明らかにし、ハプロタイプの組合せと果皮アントシアニン含量との関係を調査する。

成果の内容・特徴

  • ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプは、少なくとも6種類存在する(図1)。ハプロタイプA、Dはアントシアニン合成誘導機能を失っているのに対し、ハプロタイプB、C、Eは機能を有している。ハプロタイプFの機能の有無は不明である。
  • 果樹研究所ブドウ・カキ研究拠点において育成中の2倍体の実生群[交雑親1(ハプロタイプA/C)×交雑親2(ハプロタイプA/E)]は、ハプロタイプA/C:A/E:C/E:A/Aが概ね1:1:1:1の割合に分離し、理論比と適合する。このうち、A/C、A/E、C/Eの実生群の果粒はすべて着色し、A/Aの実生群の果粒は黄緑色である。
  • 着色個体のうち、アントシアニン合成誘導機能のあるハプロタイプ(図1)が2つ存在するハプロタイプC/Eの実生群は、1つだけの実生群(ハプロタイプA/C、A/E)よりアントシアニン含量が有意に高い(図2)。これは、アントシアニン合成誘導機能のあるハプロタイプが2つ存在すると、果皮アントシアニン含量が増加する傾向にあることを示す。

成果の活用面・留意点

  • ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプの解析は、ブドウ属の進化・類縁関係を明らかにする上で重要な情報となる。
  • ブドウ着色遺伝子座のハプロタイプは、今回明らかになった6種類以外にも存在する可能性が高い。
  • ハプロタイプの組合せは、アントシアニン高含有のブドウ実生を選抜する際の指標の一つとして利用できる。
  • アントシアニン合成誘導機能のあるハプロタイプが2つ存在しても、アントシアニン含量の少ない個体が生じることがあるため、アントシアニン含量の遺伝的な決定因子は他にも存在すると考えられる。

具体的データ

図1 ブドウ着色遺伝子座におけるハプロタイプ

図2 交雑実生群のハプロタイプの組合せと果皮アントシアニン含量との関係

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e.2
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2004~2008年度
  • 研究担当者:東 暁史、小林省藏、三谷宣仁、白石美樹夫(福岡農総試)、山田昌彦、上野俊人(山梨果樹試)、
                      河野 淳、薬師寺博、児下佳子
  • 発表論文等:Azuma et al. (2008) Theor. Appl. Genet. 117:1009-1019