喫煙者ほど血清カロテノイド濃度が低いとメタボリックシンドロームのリスクが高い

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

血清中α、β-カロテンおよびβ-クリプトキサンチン濃度とメタボリックシンドロームリスクとの間には負の関連が認められ、この関連は非喫煙者よりも喫煙者において顕著である。

  • キーワード:カロテノイド、メタボリックシンドローム、喫煙
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

近年の疫学研究から、ビタミンやカロテノイド等の抗酸化物質が豊富な果物・野菜を摂取することがメタボリックシンドローム(MetS)や糖尿病、循環器系疾患の発症予防に有効である可能性が示唆されている。一方、生体内において酸化ストレスの原因となる喫煙は、これら生活習慣病の重要な危険因子であることが知られている。しかしながら、喫煙習慣別に血清中のカロテノイドレベルとMetSリスクとの関連を検討した報告は無い。
そこで、当研究チームが平成15年度から実施しているミカン産地の住民約千名を対象にした栄養疫学調査(三ヶ日町研究)において、血清カロテノイドレベルとMetSリスクとの関連を喫煙習慣別に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 三ヶ日町研究の協力者1073名(女性716名、男性357名)を対象とし、BMI(体重(kg)÷身長(m)2)25以上を肥満とし、肥満を必須条件に、1)収縮期血圧値130mmHg以上あるいは弛緩期血圧値85mmHg以上、2)血中トリグリセリド値が150mg/dL以上あるいはHDLコレステロール値が40mg/dL未満、3)空腹時血糖値が110mg/dL以上、の3項目のうち2項目以上に該当する被験者をMetSとする。
  • MetSに影響すると考えられる、性・年齢・飲酒量・運動習慣・総摂取カロリー等の要因を統計学的に調整(多変量調整)し、カロテノイド濃度で高中低に3分割してMetSリスクのオッズ比(高濃度群を1.0とする)とその95%信頼区間(CI: Confidence interval)を求めると、全被験者を用いた解析の場合、血清β-カロテン低濃度群で、3.24(CI:1.20-8.74)となる。非喫煙者の場合、血清β-カロテン低濃度群でMetSリスクの上昇が認められ、オッズ比は3.33(CI: 1.12-9.84)である(図1)。これに対し喫煙者では、血清β-カロテン中濃度群および低濃度群ではそれぞれ1.54(CI:0.12-19.4)及び15.7(CI:0.84-290.2)である。α-カロテンおよびβ-クリプトキサンチンでも、血清濃度が低いほど有意なオッズ比の上昇傾向が認められる。
  • 血清中のα、β-カロテン及びβ-クリプトキサンチン濃度とMetSリスクとの負の関連は、非喫煙者よりも喫煙者において顕著である。

成果の活用面・留意点

  • カロテノイドが豊富な果物・野菜の摂取がMetSの発症予防に役立つ可能性が示唆されることから、今後ヒトレベルでの研究を進める際に役立つ資料となる。
  • 本調査結果は横断研究の結果であり、結果と原因との時間的な関係を考慮出来ていないため、より因果関係を明らかにするためには追跡研究が必要である。

具体的データ

図1 血清カロテノイド濃度別にみたメタボリックシンドローム出現の多変量調整オッズ比:喫煙習慣との関連

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 課題ID:312-c
  • 予算区分:委託プロ(食品)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:杉浦 実、中村美詠子(国立長寿研)、小川一紀、生駒吉識、松本 光、下方浩史(国立長寿研)、
                       安藤富士子(国立長寿研)、矢野昌充(生研センター)
  • 発表論文等:Sugiura et al. (2008) Br. J. Nutr. 100(6):1297-1306