Granier法によるニホンナシの樹液流量測定で蒸散量が推定できる
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要約
設置が簡便で長期間連続測定が可能なGranier法で測定したニホンナシの樹液流速に主幹の辺材面積を乗じて求めた樹液流量は、重量法で測定したニホンナシの蒸散量とよく一致する。
- キーワード:Granier法、樹液流、ニホンナシ、蒸散量
- 担当:果樹研・果樹温暖化研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培、共通基盤・農業気象
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近年、ニホンナシなどの果樹で根域制限栽培法の導入が検討されているが、根域制限栽培法は土量が限られているため、灌水による適切な水分管理が必要となる。一方、加熱装置のついた温度計プローブを用いて林木の樹液流量を簡便に連続測定できる方法(Granier法:Granier,1985)が開発され、同じ木本植物の果樹でも同様に利用できると予想されるが、樹種ごとに補正の必要性が指摘されている。樹液流量は蒸散量と同量と考えられ、樹液流量を精度良く測定できれば蒸散によって失われる水の量が分かり、根域制限栽培等の灌水制御での利用が期待される。そこで、Granier法によるニホンナシの蒸散量推定の有効性を検証する。
成果の内容・特徴
- Granier法は直径2mmの2本の温度計プローブを10cm程度離して幹に20mm挿入し(図1A、B)、上方のプローブを加熱することにより、プローブ間の温度差から相関式(式1:Granier,1987)に基づき樹液流速を推定する方法である。樹液流量は樹液流速に辺材面積(図1B)を乗じて計算する(式2)。13年生のニホンナシ「幸水」を用いて樹液流量と蒸散量の測定を同時に行い、両者を比較する(図1C)。
- Granier法により測定した樹液流量は重量法により測定した蒸散量と曇天日(6/26)および晴天日(6/27)に同様な日変動を示す(図2)。
- Granier法により測定した日樹液流量は重量法により測定した日蒸散量と長期間よく一致し(図3)、ニホンナシの蒸散量測定にGranier法は有効である。
成果の活用面・留意点
- 本成果により心材が発達していないニホンナシでは補正の必要がないが、心材が発達しているニホンナシや他の樹種での利用では検討が必要である。
- 本成果は樹を切断、染色して辺材面積を確認したが、本手法で継続して測定する場合は成長すいで辺材面積を確認する必要がある。
- 本法はプローブ間の温度差から樹液流量を計算するので、主幹に断熱材を設置するなど温度の影響を受けない工夫をする必要があるが、日射による幹温度の上昇や地温と幹温度に差がある場合などに移流熱の影響を受けることがあり、測定誤差の原因となる。
- 本法による半年間以上の連続測定の精度は未確認であり、それ以上になる場合は設置位置周辺の枯れが予想されるので、設置位置を変更したほうが良い。
具体的データ





その他
- 研究課題名:気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
- 課題ID:215-a.4
- 予算区分:実用技術(北陸の果樹)
- 研究期間:2005~2007 年度
- 研究担当者:杉浦裕義、阪本大輔、杉浦俊彦、朝倉利員、森口卓哉
- 発表論文等:Sugiura et al. (2009) J. Agric. Meteorol. 65(1) : 83-88