カキ系統「No.3」および「S22」を台木にすると「富有」がわい化する

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要約

わい性台木候補である「No.3」および「S22」を台木にした「富有」の樹高は低くなり、樹冠容積および樹冠占有面積も小さくなる。穂木の主幹断面積は、総新梢長および樹冠容積と高い正の相関関係を示し、わい性効果の簡易推定指標として利用できる。

  • キーワード:カキ、わい性台木、主幹断面積、樹冠容積、総新梢長
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カキは高木性の樹種のため、せん定や収穫を含めた着果管理など高所作業が多くなる。このため、わい性台木の開発は、栽培管理の省力・軽労働化を図る上で重要である。 「No. 3」および「S22」は、静岡県が「前川次郎」園から選抜したわい性台木の候補系統である。また、カキの近縁種である「ラオヤーシ」(老鴉柿:Diospyros rhombifolia)は小灌木になるため、わい化効果が期待される。 そこで、3種類のわい性台木候補に「富有」を接ぎ木した樹を無せん定・無着果で栽培し、そのわい性効果を検証する。また、樹体生長に対するわい性効果を簡易に推定する指標として、穂木の主幹断面積と樹冠容積および総新梢長との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「No.3」、「S22」、「ラオヤーシ」および共台(「アオガキ」実生)(対照)を台木とし、無せん定・無着果で栽培した6年生「富有」の樹高は、対照>「S22」≒ 「No.3」>「ラオヤーシ」となる(表1)。
  • 無せん定・無着果で栽培した「ラオヤーシ」台6年生「富有」の樹高および樹冠容積は著しく小さくなり、強いわい性効果を示す(表1)。しかし、台負けが強く、樹勢も著しく弱るため、わい性台木として不適当である(表1)。
  • 無せん定・無着果で栽培した「No.3」および「S22」を台木とした6年生「富有」の樹冠容積および樹冠占有面積は、それぞれ対照区の5割と6割になる(表1)。また、新梢数および総新梢長は、ともに対照区の約4割になる(表1)。
  • これら樹体の樹冠容積と総新梢長との間には、高い正の相関関係(r = 0.97)がある(データ略)。また、穂木の主幹断面積と総新梢長(図1)および樹冠容積(図2)との間には、それぞれ高い正の相関関係がある。このことから、総新梢長や樹冠容積の簡易推定に穂木の主幹断面積が利用できる。

成果の活用面・留意点

  • 「富有」のわい性台木開発において、樹体生長上の基礎的な資料になる。
  • わい性台木が「富有」の果実品質に及ぼす影響については、今後検討を要する。
  • 他の品種で利用する場合は、わい性効果や果実品質など検討する必要がある。

具体的データ

表1 無せん定・無着果で栽培した「富有」の生長量に及ぼす台木の影響(6年生)

図1 主幹断面積と総新梢長との関係 すべて供試樹のデータから作図した(図2も同様)

図2 主幹断面積と樹冠容積との関係

その他

  • 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質果実の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e.2
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:薬師寺博、児下佳子、東 暁史、土田靖久(和歌山果樹試)、朝倉利員、森永邦久
  • 発表論文等:Yakushiji et al. (2008) Acta Hort. 772 :385-388.