VlmybA1-2は園芸作物における遺伝子導入ビジュアルマーカーとして利用できる

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要約

ブドウ「巨峰」から単離された転写因子VlmybA1-2 cDNAをキウイフルーツ、トマトおよびナスに導入して発現させると、植物組織の切り口に赤色の細胞を生じさせ、その赤色はカルスとなっても維持される。したがってVlmybA1-2はこれらの園芸作物のビジュアルマーカーとして利用できる。

  • キーワード:VlmybA1-2、アントシアニン、ビジュアルマーカー
  • 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

植物の遺伝子解析にはGUSやGFPなどのレポーター遺伝子がビジュアルマーカーとして用いられている。レポーター遺伝子は特定の遺伝子に連結させ、それらの遺伝子の発現を可視化することで目的遺伝子の発現を調べるが、GUSやGFPの発現を可視化するためには染色や蛍光顕微鏡などの技術や装置を要する。ブドウ「巨峰」から単離されたVlmybA1-2(AB073012)cDNAはアントシアニン合成誘導能を持ち、VlmybA1-2が導入され、アントシアニンを合成した細胞は赤色を呈するためその発現を確認することが出来る。
そこで、VlmybA1-2が双子葉の園芸作物のビジュアルマーカーとして利用可能か、キウイフルーツ、ナスおよびトマトを材料として検討する。

成果の内容・特徴

  • Nosプロモーターに連結したカナマイシン耐性(NPTII)遺伝子とカリフラワーモザイクウイルス 35Sプロモーターに連結したVlmybA1-2を配置したpBI121(図1)を持つAgrobacterium tumefaciens LBA4404をキウイフルーツに感染させると、遺伝子が導入された細胞が赤くなる(図2A-D)。
  • キウイフルーツ以外の双子葉の園芸作物でもVlmybA1-2の発現は確認され、トマト(図2E)およびナス(図2F)の子葉切り口でも赤色細胞が形成される。
  • VlmybA1-2の発現は、実体顕微鏡下で赤色細胞を確認することにより可視化できる。したがって、VlmybA1-2はGUSやGFPと同様、レポーター遺伝子、ビジュアルマーカーとして利用できる。
  • キウイフルーツの組換え細胞で生じた赤色の色素はアントシアニンであり、主なアントシアニンはcyanidin 3-O-(2-O-β-D-xylosyl)-β-D-glucoside (cyanidin 3-O-sambubioside)である(データ略)。

成果の活用面・留意点

  • VlmybA1-2の発現の確認には、染色や蛍光顕微鏡などの技術や装置を必要としない。
  • 内生のアントシアニンや赤紫色の色素を持つ植物組織ではVlmybA1-2により誘導された赤色細胞との区別が困難であり、利用できない。
  • 上記の植物以外では、シロイヌナズナ、タバコでVlmybA1-2のホモログであるVlmybA2の導入による赤色植物の出現が報告されている。

具体的データ

図1 発現ベクターのT-DNAの構造(pBI121を改変)

図2 VlmybA1-2の園芸作物での発現。キウイフルーツ(A-D)、トマト(E)およびナス(F)へのVlmybA1-2の導入。発現ベクターを保持するアグロバクテリウムを葉片に感染させると、約2週間後に切り口に赤色細胞が観察される(A-C)。2ヶ月後赤色細胞はカルスへと発達した(D)。赤紫色のカルスはトマト(E)とナス(F)の子葉への感染によっても観察される。

その他

  • 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e.2
  • 予算区分:基盤研究費、科研費
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:児下佳子、小林省藏、石丸 恵(大阪府大)、船本佳央(山口大)、白石美樹夫(福岡農総試)、
                       東 暁史、薬師寺博、中山真義(花き研)
  • 発表論文等:Koshita et al. (2008) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 77. 33-37