CuMFT1プロモーターはカンキツの種子で高い遺伝子発現を誘導する

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要約

ウンシュウミカン由来のFT/TFL1ファミリー遺伝子であるCuMFT1は、種子で高い発現を示す。この遺伝子の発現制御領域を単離し、レポーター遺伝子に結合してカンキツ類およびシロイヌナズナに導入すると種子で高い発現誘導を示す。

  • キーワード:カンキツ、プロモーター、種子、遺伝子発現
  • 担当:果樹研・果樹ゲノム研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

カンキツ類では、無核性や多胚性など種子における重要形質に関して遺伝子レベルでの解析が進められている。今後これらの形質に関連する遺伝子の機能解析や遺伝子導入による新品種育成の際に、種子における遺伝子の発現制御技術が必要となる。しかし、種子における遺伝子発現制御についての知見が乏しく、利用可能なプロモーターが限られている。 カンキツFT/TFL1ホモログの1つであるCuMFT1遺伝子はカンキツの成熟種子で高い発現を示すことから、その発現制御領域を単離・解析してカンキツ類の種子で遺伝子発現を誘導するプロモーターを獲得する。

成果の内容・特徴

  • ウンシュウミカンの遺伝子CuMFT1は、シロイヌナズナのFT/TFL1ファミリータンパク質の1つであるMFTと相同性(58%)を示すアミノ酸配列をコードする。この遺伝子は、ウンシュウミカンの花と種子で発現が確認されるが、特に成熟種子で高い発現を示す(図1)。
  • CuMFT1の5’上流側、翻訳開始点より約2.4kbの塩基配列には、既知のシスエレメントであるTATAボックス、種子特異的な遺伝子発現に関わるRYボックス、アブシジン酸応答性に関わるABRE-like distBエレメント等と相同な配列が存在する(図2)。
  • CuMFT1の5’上流約2.4kbの領域を、レポーター遺伝子であるβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子と結合し、パーティクルガンによりカンキツ組織に直接導入し一過的な発現を解析すると、葉や果実中のさじょうと比較して種子におけるGUS遺伝子の活性が高いため(図3)、この領域はカンキツ種子で高い発現誘導活性を持つと考えられる。
  • CuMFT1の5’上流約2.4kbの領域をGUS遺伝子と結合しシロイヌナズナに導入すると、その形質転換体は種子で高いGUS活性を示すことから(図4)、この領域はシロイヌナズナの種子でも高い発現誘導活性を持つことが分かる。

成果の活用面・留意点

  • CuMFT1の5’上流約2.4kbの領域は、カンキツ類やシロイヌナズナの成熟種子において発現誘導活性をもつプロモーターとしての利用が期待できる。
  • カンキツ類では、パーティクルガンを利用した一過性発現による確認のみである。

具体的データ

図1 CuMFT1のRT-PCRサザンブロット法による発現解析

図2 プロモーター 解析に用いたCuMFT1の5’上流域の構造

図3 ボンバードメント法により測定したカンキツにおけるCuMFT1プロモーター活性(同一英小文字間にはTukey’s multiple rangetest による5%有意差がないことを示す)図4 シロイヌナズナ形質転換体におけるCuMFT1プロモーターの活性(図中の縦線は標準偏差を示す)

その他

  • 研究課題名:果樹の育種素材開発のための遺伝子の機能解析及びDNA利用技術の開発
  • 課題ID:221-j
  • 予算区分:基盤研究費、委託プロ(新事業)
  • 研究期間:2003~2008年度
  • 研究担当者:遠藤朋子、西川芙美恵、島田武彦、藤井浩、清水徳朗、大村三男(静岡大農)
  • 発表論文等:Nishikawa et al. (2008) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 77 (1):38-46