Metarhizium anisopliae FRM515株はチャバネアオカメムシおよびツヤアオカメムシに強い病原力を示す

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要約

昆虫病原糸状菌、Metarhizium anisopliae FRM515株は、果樹を加害する主要なカメムシである、チャバネアオカメムシおよびツヤアオカメムシに対して強い病原力を示すが、クサギカメムシに対する病原力は弱い。

  • キーワード:果樹カメムシ、昆虫病原糸状菌、微生物防除、病原力
  • 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

果樹カメムシ類は、果樹園外の針葉樹林等で発生し、成虫が果樹園に飛来して果実を吸汁加害することから難防除害虫とされている。カメムシの防除は、果樹園への飛来時期に定期的な薬剤散布で行われているが、近年の環境や食の安全・安心に対する意識の高まりとともに、化学農薬に頼らない防除技術の開発が求められている。そこで、微生物防除資材のひとつである昆虫病原糸状菌を用いた果樹カメムシ防除の可能性を検討するため、カメムシに対する昆虫病原糸状菌の病原力を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 昆虫病原糸状菌、Metarhizium anisopliae FRM515株のチャバネアオカメムシに対する病原力は、カメムシの死亡率を調べた711菌株中(Beauveria属290菌株、Metarhizium属339菌株、Paecilomyces属82菌株)で最も強い。
  • チャバネアオカメムシをM. anisopliae FRM515株の分生子懸濁液に浸漬する接種手法を用いた場合の半数致死濃度は6.0×104 分生子/mlであり、低濃度でカメムシを死に至らせることができる。
  • M. anisopliae FRM515株のツヤアオカメムシに対する病原力はチャバネアオカメムシと同程度に強く、1×108分生子/mlの分生子懸濁液を用いて接種したときの半数致死時間は、それぞれ4.4日と4.7日である(図1、表1)。
  • クサギカメムシに対する病原力は、チャバネアオカメムシやツヤアオカメムシに比べて顕著に弱く、同じ濃度の分生子懸濁液(1×108分生子/ml)を用いて接種しても半数致死時間は10.4日と他の2種カメムシに比べて、2倍以上の期間が必要である(図1、表1)。

成果の活用面・留意点

  • M. anisopliae FRM515株はチャバネアオカメムシやツヤアオカメムシの微生物防除素材として有望であるが、屋外での施用方法を検討する必要がある。
  • M. anisopliae FRM515株のクサギカメムシに対する病原力が低下する機構を明らかにすることは、昆虫病原糸状菌の宿主特異性に関する知見を得る手がかりとなる。

具体的データ

図1 <span style=Metarhizium anisopliae FRM515 株の各種カメムシに対する病原力" width="595" height="415" />

表1 Metarhizum anisopliae FRM515 株の各種カメムシに対する半数致死時間

その他

  • 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
  • 課題ID:214-n
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2001~2008年度
  • 研究担当者:井原史雄、外山昌敏、三代浩二、栁沼勝彦
  • 発表論文等:1) Ihara et al. (2001) Appl. Entomol. Zool. 36(4):495-500
                        2) Ihara et al. (2008) Appl. Entomol. Zool. 43(4):503-509