ジベレリンと花かす落としを同時処理できるブドウ花冠取り器
要約
ブドウ花冠取り器は、ジベレリン処理用のカップ上部に花穂が通過できるブラシを取り付けた道具である。満開期のジベレリン処理と同時に簡便に花かすを落とすことができる。
- キーワード:ブドウ、花かす落とし、ジベレリン処理、省力化
- 担当:果樹研・ブドウ・カキ研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
ブドウの花冠は開花後もすぐには脱落しないため、灰色かび病菌の二次感染源や傷果の原因になる。灰色かび病の耕種的防除法として「花かす(主として花冠)落とし」が奨励されている。しかし、開花期から満開期にかけては、ジベレリン処理や新梢管理等多くの作業が重なる農繁期であることから、花かす落としは遅れがちになる。
そこで、ジベレリン処理溶液を入れるカップの上部に花穂が通過できるブラシを取り付け、「巨峰」系ブドウの第1回ジベレリン処理と同時に花かす落としを簡便に行うことのできる道具「花冠取り器」を考案する。
成果の内容・特徴
- 花冠取り器は、ジベレリン浸漬用のカップ上部に花穂整形後の花穂が通過できる円形ブラシを取り付けた道具である(図1)。
- 満開期に第1回ジベレリン処理を行う品種に対して、ジベレリン溶液に花穂を浸漬すると同時に、ブラシで花冠をこすり落とすことができる(図2)。
- 対照区(カップのみ)のようにジベレリン溶液に花穂を浸漬しただけでは、花冠を取り除く効果は3.9%と低い(表1)。これに対して、花冠取り器を使用した場合、処理直後に46%の花冠を取り除くことができる。処理2日後では、対照区の花冠除去率は38%であるのに対して、花冠取り器区は70%である(表1、図3)。
- 使用直後の小花の損傷や落花はほとんどない(表1)。また、ブラシに起因した傷は観察されない。
- 花冠取り器で処理した果房の果実品質は、対照区と有意差はなく果実品質への影響は認められない(データ省略)。
成果の活用面・留意点
- 開花期中に幼果から花かすを取り除くことができるため、灰色かび病の二次感染防止ならびに傷果発生の軽減に寄与できる。
- 花かすをよく取り除くため、花穂を3回程度ブラシで往復させた方がよい。
- 平成24年から市販化の予定である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:ぶどう、かきにおける食べやすく肉質等が優れる優良品種の育成及び着色機構解明等による高品質生産技術の開発
- 中課題整理番号:213e.2
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:薬師寺博、上野俊人、東暁史、児下佳子
- 発表論文等:1)薬師寺ら(2009)園芸学研究、8(2):209-213
- 2)薬師寺博、上野俊人「花冠取り器」実用新案第3129972号