リンゴ「ふじ」では収穫後冷蔵することにより1-MCPの処理適期を拡大できる
要約
リンゴ「ふじ」では、収穫後2°Cで保管すると収穫後の品質低下が抑制され、収穫22日後に1-MCPを処理しても、収穫翌日処理とほぼ同等の品質保持効果が得られる。
- キーワード:エチレン、処理時期、鮮度保持剤、日持ち性
- 担当:果樹研・果実鮮度保持研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
1-メチルシクロプロペン(1-MCP)は強力なエチレン作用阻害剤であり、リンゴの収穫果実に暴露処理すると貯蔵中の品質低下を顕著に抑制する。1-MCPの処理効果は、収穫後果実のエチレン生成量が増加するに伴い低下することから、処理は収穫後速やかに行うことが必要とされている。しかしながら、「ふじ」は、収穫期には連日多量の果実が集荷されるため、収穫後短期間に1-MCPを処理することは困難な場合も多いと考えられる。そこで、収穫から1-MCPを処理するまでの保管温度と日数が品質保持効果に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- リンゴ「ふじ」は、収穫後2°Cで保管すれば、収穫22日後においても果肉硬度や酸含量の低下、果心内エチレン濃度の上昇が抑制される(図1)。
- 収穫後1-MCPを処理するまで2°Cで保管する場合、収穫22日後までに1-MCPを処理すれば、収穫約5ヶ月後における果実品質は収穫翌日に1-MCPを処理した場合とほぼ同等である(図2)。
- 一方、収穫後1-MCPを処理するまで20°Cで保管する場合、1-MCPの処理時期が遅れるほど収穫約5ヶ月後の滴定酸含量は低下する傾向にある(図2)
- 以上のことから、「ふじ」では、収穫後1-MCPを処理するまで2°Cで保管することにより、高い品質保持効果を得られる処理時期を延長できる。
成果の活用面・留意点
- 農薬登録において、リンゴの1-MCP処理は、収穫後6日以内に行うこととされているため、本技術を使用するためには、農薬登録の適用拡大が必要である。
- 1-MCPの処理効果を左右する収穫果実の成熟度は、産地や目標とする販売時期によっても異なるため、実用化に当たってはさらに検討が必要である。
- 「ふじ」以外の品種では別途検討が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:新規包装資材等を用いた果実鮮度保持技術の開発
- 中課題整理番号:313a
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2003~2009年度
- 研究担当者:樫村芳記、羽山裕子、阪本大輔
- 発表論文等:樫村ら(2010)園学研9(3):361-366