TDR計を用いた枝内水分測定によるウンシュウミカンの水分ストレス診断
要約
TDR計を用いた枝内水分測定は、温度補正を行い枝内水分の基準点を設定することで、7~9月の水分ストレスの変化を精度良く推定できる。
- キーワード:TDR、カンキツ、水分ストレス、葉内最大水ポテンシャル
- 担当:果樹研・カンキツ研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
カンキツ類は、水分ストレスを付与することで、果実品質が向上することから、水分ストレス状態を簡易に診断できる技術の開発は重要である。そこで、TDR計(Time domain reflectometry)を用いた水分ストレス診断技術を開発する。また、同法による測定精度を高めるため、温度補正式を作成し、さらに水分ストレスの変化を精度良く推定できる方法に改良する。同法によって得られる値が、研究用の水分ストレス指標として用いられる葉内最大水ポテンシャル(LWP)との相関を明らかにすることにより、その有用性を検証する。
成果の内容・特徴
- TDR枝内水分測定法は、カンキツ類の主枝部または主幹部に対し、伸長方向に沿って2本のプローブ(ステンレス平頭釘、♯16×25 mm、SUS304)を32 mmの間隔で深さ15 mmで挿入し、このプローブを介した電気的データより枝内水分を測定する(図1、図2)。
- 枝内温度とTDR計の測定値は、相関が高く、また、枝部周辺気温を用いて枝内温度を推定することで簡便で精度の高い補正式が作成される(図3)。また、年間の枝内水分が最も高いピーク期(土壌が湿潤状態で、最高気温30°C以上の時期を目安とする)の測定値を基準点として、その後の測定値を相対値化する。
- ウンシュウミカンにおいて、水分ストレスの異なる樹のLWPと温度補正後TDR相対値(Rrev)の間には、7~9月に高い相関が認められる(図4)。よって、本法はシートマルチ栽培等による水分ストレス付与時期の枝内水分状態を簡便に把握することができる。
成果の活用面・留意点
- 本測定法は、カンキツの高品質栽培における水分ストレス診断技術として利用できる。
- 年間の枝内水分のピーク期は、気温に依存することから、相対値の基準点は栽培地域の気温によって多少の違いがある。
- 本測定法は、日中に測定を行っている。
- プローブを半年以上使用する場合、枝の肥大による埋没がみられる。連年測定する場合は、プローブを異なる部位に設置し直したほうが良い。
具体的データ




その他
- 研究課題名:高収益な果樹生産を可能とする高品質品種の育種と省力・安定生産技術の開発
- 中課題整理番号:213e.3
- 予算区分:基盤、高度化事業、交付金プロ(高収益カンキツ)
- 研究期間:2005~2009年度
- 研究担当者:岩崎光徳、深町浩、佐藤景子、今井篤、野中圭介、平岡潔志、奥田均(三重大学)
- 発表論文等:奥田ら(2007)園学研、6(4):529-533
岩崎ら(2010)園学研、9(4):433-439