KODAによるニホンナシの自発休眠打破効果
要約
ニホンナシ「幸水」、「なつしずく」および「豊水」の3品種についてKODA 100μMを処理することにより、自発休眠打破剤として農薬登録されているシアナミドに比べて効果は劣るものの、自発休眠打破の効果が認められる。
- キーワード:ニホンナシ、KODA、気候温暖化、発芽不良、休眠打破
- 担当:果樹研・果樹温暖化研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
1998年(平成10年頃)より、ニホンナシの施設栽培において、温暖化による自発休眠覚醒の不足のため、そのまま加温しても萌芽不良症状を呈したり、萌芽しても開花までの期間が長くなるなど、自発休眠覚醒に関わる問題が生じている。また、将来、我が国の露地栽培で同様な現象が起きる可能性もあるため、低温遭遇時間不足を補う目的で休眠打破剤の使用が考えられる。現在、シアナミド剤が自発休眠打破剤として利用されているが、今後、温暖化が進むことにより、露地栽培などでも使用する機会が増え、人体への負担が増える可能性がある。このことから、毒性の少ない新規自発休眠打破剤の開発が望まれている。これまでに、トチノキにおいてジャスモン酸を処理することにより、自発休眠打破効果が認められている。このことから、植物由来の天然物質であり、ジャスモン酸と類縁の9,10-α-ケトールリノレン酸(KODA)について自発休眠打破効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 12月上旬の「幸水」切り枝において、KODAによる自発休眠打破効果が認められ、10μMよりも、100 μMおよび1000 μMを処理することにより、高い効果が得られる(表1)。
- 自発休眠状態にあるニホンナシ「幸水」、「なつしずく」、「豊水」の切り枝にKODA 100μMを処理し、25°Cのインキュベーターで水挿し培養すると、無処理よりも萌芽が促進されて萌芽率が高くなる。(図1)。
- ニホンナシ等で休眠打破剤として登録されているシアナミドに対して、KODA処理の効果は劣るものの、10月下旬の処理に比べ、11月下旬の処理では両薬剤による効果の差は小さくなる(図2)。
- KODA処理ではいずれの処理時期においても薬害は認められない(データ略)。
成果の活用面・留意点
- 今回得られた結果は切り枝条件であり、実用技術に利用するためには、さらに検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:気候温暖化がもたらす果樹生産阻害要因の解明とその対応技術の開発
- 中課題整理番号:215a.4
- 予算区分:異分野融合
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:阪本大輔、中村ゆり、杉浦裕義、杉浦俊彦、朝倉利員、横山峰幸((株)資生堂)、森口卓哉
- 発表論文等:Sakamoto et al. (2010) HortScience 45(10): 1470-1474