カンキツのカロテノイド含有量に関わる遺伝子座のマッピング

要約

カンキツの第6連鎖群ではβ-クリプトキサンチン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、第9連鎖群ではフィトエン、ζ-カロテン、ルテインの含量に関わるQTLが検出される。ビオラキサンチンとζ-カロテンは、それぞれ第2、第8連鎖群でも検出される。

  • キーワード:カロテノイド、β-クリプトキサンチン、QTL、カンキツ
  • 担当:果樹研・健康機能性研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

β-クリプトキサンチンは、ウンシュウミカンの主要なカロテノイドである。これまで、生理的要因として、カロテノイドの生合成や分解に関わる遺伝子発現が、果肉のβ-クリプトキサンチン集積に関与することを明らかにしてきたが、カロテノイド集積に関与する遺伝的要因は不明である。このため、QTL(量的形質遺伝子座)解析によりカロテノイド集積に関与する連鎖地図上の領域を明らかにし、カロテノイド集積に関わる遺伝的要因の解明に有用な情報を得る。

成果の内容・特徴

  • 「興津46号」と「かんきつ中間母本農5号(以後、「農5号」と表記)」の交雑によって得られた集団(51個体)のフィトエン、ζ-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン含量、ならびにこれらの合計値(総カロテノイド含量)には、広い変異が認められ、両親の値を大幅に超越する個体が出現する(表1)。
  • 「興津46号」の連鎖地図(全長660cM、 345個のマーカーで構成)と「農5号」の連鎖地図(全長642cM 、254個のマーカーで構成)を利用してQTL解析を行うと、「興津46号」の第2及び第8連鎖群(A-02とA-08)には、それぞれビオラキサンチン、ζ-カロテン含量に関するQTLが検出される(表2)。
  • 「農5号」の第6連鎖群(G-06)には、総カロテノイド含量のほか、β-カロテンを経由して生成されるカロテノイドのβ-クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン含量に関するQTLが検出される(表2)。
  • 「農5号」の第9連鎖群(G-09.2)には、生合成経路上流で生成されるカロテノイドのフィトエン、ζ-カロテン含量に関連するQTLが検出される(表2)。さらに、α-カロテンを経由して生成されるカロテノイドのルテイン含量に関連するQTLも検出される(表2)。
  • Gn0005マーカー(「農5号」第6連鎖群由来)を用いて、遺伝子型をホモ型(aa)とヘテロ型(ab)に区別し、それぞれのβ-クリプトキサンチン含量を比較すると、ヘテロ型になると含有量が低下する傾向にあり(図1)、両者のβ-クリプトキサンチン含量に有意差が認められる(データ略、Kruskall-Wallis解析による)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、51個体よりなる交雑集団から得た結果であり、本成果で示したQTL以外の有力なQTLが有意に検出されていない可能性があることに留意する必要がある。
  • 本成果は、カロテノイド高含有系統の選抜マーカー作成の可能性も示唆するが、個々のQTLの寄与率は小さいため、複数マーカーの相加的効果等の検討が必要である。

具体的データ

「興津46 号」、「かんきつ中間母本農5 号」とその交雑系統における カロテノイド含量

カロテノイド含量のQTL 解析

第6 連鎖群のGn0005 マーカー 遺伝子型による交雑系統の区分 とβ-クリプトキサンチン含量

その他

  • 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
  • 中課題整理番号:312c
  • 予算区分:交付金プロ(二次代謝、機能性園芸)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:生駒吉識、杉山愛子(静岡大)、大村三男(静岡大)、松本光、島田武彦、藤井浩、遠藤朋子、
                       清水徳朗、根角博久
  • 発表論文等:Sugiyama et al. (2011) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 80(2):136-144