ウンシュウミカンの着花および発芽に及ぼすKODA処理の影響
要約
ウンシュウミカンに対し、生理的花芽分化初期に9,10-α-ケトールリノレン酸(KODA)を処理し、10月末に加温した場合、無処理に比べて腋芽の発芽が促進され、樹全体の花蕾発生数が増大する。
- キーワード:KODA、オキシリピン、着花促進、ウンシュウミカン
- 担当:果樹研・果実鮮度保持研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・栽培
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
9,10-α-ケトールリノレン酸(KODA)は、アオウキクサより単離されたオキシリピンに属する化合物で、様々な植物に対し、花成促進効果があると報告されている。そこで、早期加温型のハウス栽培における着花不良の軽減などを目的とし、ウンシュウミカンに対するKODAの着花促進作用について検討する。
成果の内容・特徴
- 露地栽培の1年生ウンシュウミカンに対し、生理的花芽分化初期の8月末~10月初めの期間中に100 μM のKODAを一回処理し、10月末(花芽分化が不十分な時期)に摘葉高温処理(全摘葉して25°Cに移し発芽を促す)を行った場合、無処理区に比べ、KODA散布を行った処理区では、いずれも発芽節数が増大し(図1C)、花蕾発生数も増大する傾向がある(図1A)。一方、発芽節数あたりの花蕾発生数は増大がみられない(図1B)。
- 上記と同じKODA処理を行い、11月中旬以降(花芽分化が十分な時期)に摘葉高温処理を実施しても、発芽節数や花蕾発生数の増大は認められない(データ省略)。
- 高温条件下(25°C)で栽培し、生理的花芽分化が進行する条件下にない1年生ウンシュウミカンに対し、100 μM のKODAを処理した後、摘葉高温処理を実施しても、無処理区と比べ、発芽節数や花蕾発生数に有意差はなく、KODA処理の影響は認められない(図2A~C)。
- 以上のことから、KODAは、生理的花芽分化が進む条件下で処理した場合に、発芽不良を改善し、結果として着花数を増大させる効果がある。
成果の活用面・留意点
- KODAの作用は、ウンシュウミカンの早期加温型ハウス栽培における着花不良の改善に役立つ可能性がある。
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KODAは不安定な化合物であるため、KODAの実用化を進めるにあたっては、安定した誘導体の開発等が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:流通過程における果実品質成分の変動機構の解明とその制御技術の開発
- 中課題整理番号:313a
- 予算区分:異分野融合
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:中嶋直子、生駒吉識、松本 光、中村ゆり、横山峰幸(資生堂)、伊福欧二(資生堂)、吉田茂男(理研)
- 発表論文等:中嶋ら(2011)園芸学研究、10(3): 407-411