ショ糖はハダニ捕食性昆虫類の代替餌として利用できる
要約
ハダニの主要な土着天敵であるキアシクロヒメテントウ、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニアザミウマは、餌であるハダニがいない場合でもショ糖を摂取することで長期間生存でき、再びハダニを摂食した際には速やかに産卵を再開できる。
- キーワード:キアシクロヒメテントウ、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニアザミウマ、ショ糖、代替餌
- 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
- 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
- 区分:果樹・病害虫
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
捕食性昆虫類であるキアシクロヒメテントウ、ヒメハダニカブリケシハネカクシ、ハダニアザミウマは、果樹の難防除害虫であるハダニ類に対する有力な土着天敵として利用が期待されている。
これら捕食性昆虫類による防除効果を安定化させるためには、果樹園内における密度を安定的に維持する技術の開発が必要であり、ハダニの密度が低い時には代替餌を提供するなど環境の整備が有力な手段となる。そこで、ショ糖が捕食性昆虫類の生存や繁殖に及ぼす影響を明らかにし、補助的な餌としての可能性を評価する。
成果の内容・特徴
- キアシクロヒメテントウ、ヒメハダニカブリケシハネカクシでは、ナミハダニを与えない場合には与えた場合と比べて生存期間が短縮する。このハダニ絶食条件下においてショ糖を与えた場合、20°Cにおいて半数以上の個体が生存する日数はキアシクロヒメテントウで120日、ヒメハダニカブリケシハネカクシでは45日である(図1)。ハダニアザミウマでは、ナミハダニを与えた場合とその代替にショ糖を与えた場合で同程度の生存期間を示し、半数以上の個体が45日生存する(図1)。また、いずれの捕食性昆虫種においても、水のみを与えた場合の平均生存日数は約10日と短い(図1)。
- キアシクロヒメテントウ、ヒメハダニカブリケシハネカクシでは、ハダニ絶食期間中に水に加えてショ糖を与えると、再びハダニを与えた際に速やかに産卵を再開できる(図2)。一方、ハダニアザミウマでは、ハダニ絶食期間中にショ糖や水を摂取していれば、再びハダニを与えると直ちに産卵を再開する(図2)。
成果の活用面・留意点
- これらの捕食性昆虫類は、果樹園内にハダニがいない時期でも、蜜源植物の整備等により糖類を供給することで個体群の維持が可能と考えられるが、今後、具体的な供給方法を検討する必要がある。
- ショ糖はこれらの捕食性天敵類を生物農薬として製品化した時、出荷時の代替餌としても利用できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
- 中課題整理番号:214n
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010年度
- 研究担当者:岸本英成、足立礎
- 発表論文等:Kishimoto and Adachi (2010) Appl. Entomol. Zool. 45: 621-626