クサギカメムシ越冬集団の形成には触角を介した相互刺激と暗所選好が関与する

要約

クサギカメムシ成虫の越冬時における集団の形成と維持には、触角により知覚される近接した同種個体間の相互刺激が重要な役割を果たす。また、同成虫は暗所を選好する行動特性を有し、これら環境因子に対する強い選好性が局所への集中を助ける。

  • キーワード:クサギカメムシ、越冬、集合性、定着性、光応答
  • 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6453
  • 区分:果樹・病害虫、共通基盤・病害虫(虫害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

果樹の主要害虫であるクサギカメムシが越冬時に形成する集団のサイズは、翌年の成虫発生量を予測する有用な指標となり得るが、自然条件下でそうした集団を見つけることには困難を伴う。そこで、効率的な発生予察に資する、越冬集団が作られやすい人為的なトラップの開発を目的に、越冬集団の形成過程を行動学的に明らかにする。

成果の内容・特徴

  • クサギカメムシ休眠成虫10個体を10°C条件下で閉鎖空間(290×215×55mm)に放すと、光の有無にかかわらず、成虫は著しい集合性を示す(図1、図2)。
  • 両触角を切除した成虫は集団を全く形成できないことから、少なくとも至近距離では、触角で知覚される相互の刺激が集団形成や維持において重要な役割を果たしている(図1)。
  • 暗部を有する閉鎖空間(175×80×25mm)に休眠成虫を放すと、弱照明条件下(14°C、330~620lx)であっても、成虫は暗室に好んで定位・定着し、暗所に対する強い選好性を示す(表1)。
  • 温度(10~24°C)は休眠成虫の集合性や暗所への選好定位に直接影響することはないが、温度の上昇にともない成虫の活動性は高まるため、集合過程や集団の維持に間接的に作用する可能性がある(表1)。
  • 非休眠成虫も、休眠成虫同様に集合性と暗所への選好定位を示す(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 本知見の応用により、実験室レベルで越冬集団を再現・観察することができ、越冬時の集合に関する実験的検証が可能である。

具体的データ

クサギカメムシ休眠成虫(発育時12L12D 短日処理)の集合の様子と触角を 切除した成虫の分布の様子

実験開始5 時間後における休眠成虫の実験容器内での分布

各温度条件下における休眠成虫の実験容器内定位場所

その他

  • 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
  • 中課題整理番号:214n
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2005~2007年度
  • 研究担当者: 外山晶敏、井原史雄、栁沼勝彦
  • 発表論文等:1)Toyama M. et al. (2006) Appl. Entomol. Zool. 41 (2): 309-315.
                       2)Toyama M. et al. (2011) Appl. Entomol. Zool. 46(1):  37-40.