免疫検出法によるマイコウイルスの白紋羽病菌菌体内分布の可視化
要約
白紋羽病菌菌体内におけるマイコウイルスの分布は、二本鎖RNA特異的抗体を利用した免疫検出法で可視化できる。この方法を用いてマイコウイルスの菌体内分布様式や水平伝搬能を評価できる。
- キーワード:白紋羽病、マイコウイルス、二本鎖RNA特異的抗体、菌体内分布、水平伝搬
- 担当:果樹研・果樹病害研究チーム
- 代表連絡先:電話
029-838-6453
- 区分:果樹・病害虫
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分類:研究・参考
背景・ねらい
白紋羽病は果樹類の難防除土壌病害であり、本病原菌の制御に病原力低下因子としてのマイコウイルスの利用が期待されている。マイコウイルスを有効利用するには、ウイルスが安定的かつ速やかに菌体内および菌体間で感染拡大する必要があり、ウイルスの菌体内分布様式や水平伝搬能の解明が重要となる。そこで、マイコウイルスの菌体内分布を可視化する手法を検討し、白紋羽病菌に感染する4種マイコウイルスの菌体内分布様式や水平伝搬能を評価する。
成果の内容・特徴
- 4種のマイコウイルス(パルティティウイルス、メガビルナウイルス、マイコレオウイルス、クオドリウイルス)は二本鎖RNAゲノムであり、各ウイルス単独感染菌株の菌体破砕液をメンブレンにプリントした後、二本鎖RNA特異的抗体(English & Scientific Consulting 社製)で免疫検出(Colony-print-Immunoassay;
CPIA)を行うと、ウイルスゲノムを特異的に検出できる。
- 二本鎖RNA特異的抗体を用いたCPIAで各ウイルスの菌体内分布様式を調べると、パルティティウイルスやメガビルナウイルスの均一な菌体内分布、あるいはマイコレオウイルスやクオドリウイルスの不均一な菌体内分布が可視化できる(図1)。
- ニトロセルロースメンブレンを敷いたPDA培地上でウイルスフリー株と各ウイルス単独感染株を対峙培養し(図2A)、二本鎖RNA特異的抗体を用いたCPIAを行うと、ウイルス感染株からウイルスフリー株への各ウイルスの水平伝搬が可視化できる(図2B)。菌株接触領域からウイルス感染領域の最前線までの距離から、パルティティウイルスやメガビルナウイルスの水平伝搬能はマイコレオウイルスやクオドリウイルスより高いと評価できる(図2B)。
成果の活用面・留意点
- 二本鎖RNA特異的抗体を用いたCPIA法で簡便にマイコウイルスの菌体内分布や水平伝搬を可視化でき、マイコウイルスの菌体内安定性や水平伝搬能を評価できる。
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二本鎖RNA特異的抗体に塩基配列特異性は無いため、対象ウイルスの単独感染菌株を用いる必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:果樹の紋羽病等難防除病害抑制のための要素技術の開発
- 中課題整理番号:214p
- 予算区分: イノベーション創出
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者: 八重樫元、澤畠拓夫、兼松聡子、伊藤伝
- 発表論文等:Yaegashi et al. (2011) Virology 409:280-289