収穫6~3週間前の果実周囲の温度上昇は「新高」のみつ症を助長する
要約
ニホンナシ「新高」のみつ症は、収穫6~3週間前(8月後半~9月前半)に果実周囲の空気を約2°C加温すると、発生が増加する。この時期の果実温度の上昇が「新高」のみつ症発生に関与していると考えられる。
- キーワード:ニホンナシ、生理障害、温度、温暖化
- 担当:果樹・茶・ナシ・クリ等
- 代表連絡先:電話 029-838-6453
- 研究所名:果樹研究所・栽培・流通利用研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ニホンナシ「新高」のみつ症は、成熟期に果肉の一部が水浸状となる障害である(図1)。発症部位は褐変しやすく、また症状が進むと果肉崩壊に至るため、発症果の商品性は著しく低下する。「新高」のみつ症は、夏の高温・乾燥年に多発するとされているが、果実温度のみを上昇させた場合にみつ症の発生が増加するかどうかの検証はなされていない。そこで、本研究では、2カ年2箇所(2008年に茨城県と栃木県、2009年に茨城県と熊本県)において、収穫6~3週間前(8月後半~9月前半)に果実周囲の空気を加温し、みつ症発生に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 果実周辺に果実に直接触れないように電熱線を配置し、収穫6~3週間前に果実周囲の空気を加温する(図2)と、果実周囲の温度は無加温区に比べて平均で1.4~2.5°C上昇する(表1)。
- 成熟した果実のみつ症発生率は、実施したいずれの年次・場所においても加温処理により増加し、加温区では無加温区の1.2~2.0倍である(図3)。
- 以上の結果から、収穫6~3週間前の果実温度の上昇がみつ症の発生を助長すると考えられる。
成果の活用面・留意点
- 収穫6~3週間前に果実温度の上昇を抑制することにより、みつ症の発生を軽減できる可能性がある。
- 日焼け等により果皮直下の果肉が水浸状となる障害をみつ症と呼称する場合があるが、本試験におけるみつ症は、図1に示す果肉内部に放射状に水浸状となる障害を示し、発生率は果肉のごく一部に水浸状が認められる軽微な障害を含む。
具体的データ
その他
- 中課題名:高商品性ニホンナシ・クリ及び核果類の品種育成と省力生産技術の開発
- 中課題整理番号:142a0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2007~2014年度
- 研究担当者:羽山裕子、中村ゆり、岩谷章生(熊本果樹研)、西本年伸(高知果樹試)、大谷義夫(栃木農試)
- 発表論文等:Hayama H. et al. (2014) Sci. Hortic. 175:27-32