リンゴの赤着色に関わるMYBはCOL11から光・温度情報を受ける

要約

MYBの制御因子と想定されるCOL11を導入したナズナではアントシアニンが集積し、リンゴ「ふじ」では17°Cと紫外線B処理で遺伝子発現が高まる。COL11はMYB上流領域に作用して転写を誘導するため、温度・光情報がCOL11を介してMYBに伝達される。

  • キーワード:リンゴ、アントシアニン、MYB、光、温度、COL11
  • 担当:気候変動対応・果樹温暖化対応
  • 代表連絡先:電話 029-838-6453
  • 研究所名:果樹研究所・栽培・流通利用研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

これまでの研究からリンゴの着色にはMYBが鍵因子で、MYBの種類により着色の有無が説明できる。リンゴの着色には光と温度が重要な役割をしているが、それら情報がどのようにMYBに伝達されるかは明らかでない。そこで、光シグナル伝達に関わると想定されるCOL11遺伝子に着目し、その機能、着色誘導過程での発現パターン、さらにリンゴMYB(MdMYBA)の発現制御への関わりについて明らかにする。

成果の内容・特徴

  • リンゴ「ふじ」からBBX遺伝子ファミリーであるCOL11(MdCOL11)を単離し、シロイヌナズナで過剰発現させると、アントシアニンが集積する(図1)。
  • リンゴ「ふじ」の果皮ではMdMYBAと同様に果皮が赤くなる成熟にかけてMdCOL11の遺伝子の相対的な発現量(Ubiquitin遺伝子を対照として使用)が高くなり、MdCOL11の発現パターンは果実のアントシアン集積パターンと対応している(図2)。
  • 袋掛けした「ふじ」を収穫し、その後に除袋して、紫外線Bの有無(+、または-)と温度(17°C、または27°C)処理を組み合わせて人工的に48時間果実を培養すると、17°Cで紫外線Bが存在している条件で培養した時に果皮が最も赤くなる(図3)。また、MdCOL11の発現も17°Cで紫外線Bが存在している時に最も高くなる(図3)。このことから、MdCOL11の発現は光のみならず温度による制御も受けて果皮の着色誘導に関わっていると考えられる。
  • MdCOL11タンパク質がMdMYBAの上流配列(PMYB1)に結合してその発現を制御している可能性について、図4に示すベクターを構築し、Dual-Luciferase Reporter Assay Systemにより解析すると、ルシフェラーゼ活性の相対値が約7倍となる(図4)ことから、MdCOL11タンパク質はMdMYBAの発現を正に制御していると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • アントシアニン集積の要因としての光や温度のシグナル伝達経路を解明する上で有用な情報となる。
  • 着色しない「王林」では成熟期のMdCOL11の発現は「ふじ」の約1/10程度と低い。
  • 光と温度のシグナルはMdCOL11タンパク質を介さずにMdCOL11よりも上流に位置する因子により直接MdMYBAが制御される伝達経路の存在も否定できない。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:気候変動が果樹生産に及ぼす影響の機構解明及び温暖化対応技術の開発
  • 中課題整理番号:210b0
  • 予算区分:競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011年~2013年度
  • 研究担当者:白松齢、齋藤隆徳、本多親子、初山道慶(青森県産業技術センター)、伊東明子、森口卓哉
  • 発表論文等:Bai S. et al. (2014) Planta 240(5):1051-1062