農家の世帯構成が経営規模変動に及ぼす影響

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要約

北空知中規模水田地帯では、農家及び労働力の一世代化、高齢化が進行している。そこにおける農家の経営階層構成の変動は、高齢農家の規模縮小ないし離農という農地の出し手層の拡大と、一方での同居後継ぎを確保した上層農家による一層の規模拡大という階層分化として現れており、今後ともその傾向は強まる。

  • 担当:北海道農業試験場・農村計画部・農業組織研究室
  • 連絡先:011-857-9309
  • 部会名:農村計画(農業経営)
  • 専門:経営
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

近年の北海道では農家の高齢化が著しく進行し、労働力と農家自体の再生産が困難となる農家が急増している。殊に水田地帯では相当数の高齢農家が増加して、大量な農地の供給が見込まれているが、他方、これらの農地を吸収して規模拡大をはかる農家も増大している。したがって、ここでは農家の経営規模階層変動の問題を農家の労働力構成の条件と密接に対応するものと仮定して、地域における階層構成変化の要因を明らかにする。

成果の内容・特徴

旧開中規模水田地域である北空知深川市のN集落を対象に、1988年と1993年の両時点の調査データを用い、高齢農家の規模縮小・離農過程、及び一方での三世代構成の農家層による規模拡大過程の検討を行った(表)。

  • 1988年度におけるN集落22戸は上層には同居後継ぎを確保ないし世帯主世代の若い三世代構成の農家が、そして中層、下層を中心に後継労働力不在農家が位置していた。
  • その後1993年にかけて下層の後継者不在農家は規模を縮小ないし離農しはじめ、一方同居後継ぎを確保した三世代農家層がその農地を吸収している。すなわち高齢農家の下向分化と、一方での上層農家の一層の規模拡大という階層分化の構図を示している。そして、世帯主年齢がまだ若いにもかかわらず、配偶者労働力を欠いた農家は規模拡大せず、また、年齢にかかわりなく三世代構成が規模拡大を行っている。つまり、営農拡大をもたらすものとしては労働力年齢の若さや、その量だけではなく、三世代構成という農家の連続的な再生産を可能とする形態も要因として大きいと考える。
  • 1993年時点(営農18戸)においても、この間に後継者が流出した農家を合わせて、いまだに後継者不在農家が6戸(労働力欠損農家も含めると8戸)存在する。また、一方で上向してきた農家層は現在の水稲作付け10ha~12ha規模から15ha規模を目標にしており、今後とも規模拡大の意欲が強い。したがって、今後とも労働力再生産条件の整った三世代上層農家のますますの規模拡大、一方での高齢農家の下向分化・分解という階層分化の進展は強まると考えられる。

成果の活用面・留意点

この知見は行政及び研究サイドにとって有効な情報となる。なお、以上の分析は世帯・労働力構成の条件以外の要因は排除しており、また、専ら北空知の水田単作地帯を対象としている。

具体的データ

表1 深川市N集落の農家構成および経営階層構成の変化道程

その他

  • 研究課題名:農家の高齢化と変容
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:自律機能を持った定住化農村社会へ、ニューカントリー、474号、1993.
                      北海道における農家高齢化の課題、北農試農村計画研究、7号、1994.
                      高齢農家の存在形態の特質-北海道水田地帯の事例を基に-、農村生活
                      研究、第38巻第2号、1994.