大規模畑作経営における野菜作の収益性

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要約

線形計画法のモデル分析によって、畑作経営における野菜作の収益形成と経営的性格をとらえた。野菜作を購入した経営は既存畑作経営に比較して、大幅な経営収益の増加が期待でき、その有利性は経営面積規模が小さいほど高く現れる。

  • 担当:北海道農業試験場・畑作研究センター・流通システム研究チーム
  • 連絡先:0155-62-2721
  • 部会名:農村計画(農業経営)、高収益畑作
  • 専門:経営
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

北海道の既存畑作物は、国際的な需給関係の影響を受けて全体的に供給過剰に直面しており、その生産者価格は下降傾向をたどっている。こうした畑作農業の停滞的な現状から、畑作農家の農業所得水準を高めることが急務な課題であり、その対応策として収益性の高い野菜作の積極的な導入が指摘される。そこで、十勝地域の大規模畑作経営を対象に、野菜作の収益形成と野菜作導入による経営収益の拡大の可能性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 経営計画を考慮した線形計画法によって、野菜作の収益形成とその経営的性格をとらえるためにモデル分析を試みた。家族労働2人に雇用労働(80時間/10日)を利用した場合の結果から、既存畑作経営に対する野菜作導入経営の収益増加割合は、15ha規模:149%(1329万円/892万円)、25ha規模:134%(1964万円/1464万円)、35ha規模:125%(2338万円/1870万円)、と算出される。野菜作導入によって経営収益の大幅な増加が期待でき、特に経営面積規模が小さい経営ほど収益の増加割合は高く現れる(表1)。
  • 経営面積規模の大きさに対して有利に選択される野菜品目は、15haはながいも、25haはながいも、ごぼう、ブロッコリー、35ha規模ではごぼう、ながいもが中心となっている。野菜作に替わって作付けが減少する既存畑作物は、どの面積規模においても小麦、菜豆であり、更にはてん菜が減少している。つまり、単位面積当たり収益性の低い畑作物、それに投下労働の多い畑作物が減少するようになる。しかし、野菜作の作付割合は経営面積規模が大きくなるほどに労働規制を受けて低下し、野菜作が経営収益的により有利に作付けされるためには、省力的な作付対応を図ることが重要である。
  • 代表品目であるながいもの比例利益(粗収入-流動費)を不定とした分析結果から、利益変化に対応した最適な作付面積を規範的に求めた。現行利益水準(20.7万円/10a)以下で供給弾力性が高く現れるのは15ha、20ha規模で、25ha規模以上では10a当たり30~32万円で弾力的な作付対応を示している(図1)。つまり、20ha規模以下の経営では現行利益水準で有利な作付けを示しているが、25ha規模以上の経営においては、現行利益水準を上回る収益性でない限り経営収益的に有利な作付拡大は期待できない。

成果の活用面・留意点

大規模畑作経営の野菜作導入方策に活用できるが、モデル分析による収益結果は年次間における収益変動を考慮していない点に留意する必要がある。

具体的データ

表1 モデル分析による既存畑作と野菜作導入の収益性比較

図1 ながいもの規範的供給曲線

その他

  • 研究課題名:新規導入作物の収益性の評価および産地形成条件の解明
  • 予算区分 :高収益畑作
  • 研究期間 :平成6年度(平成4~6年)
  • 発表論文等:北海道十勝地域における野菜産地形成の課題、農業経営通信、NO178、
                      1993.